溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「な、何で嘘なんてついたの!?私、すっごい不安だったよ!?………寂しかったんだよ?」
風香は彼にそう言いながら、思わず目に涙が溜まるのがわかった。急に柊が目の前から居なくなり、現れたと思ったら記憶がなくなっていたのだ。あの時の不安を思い出すと今でも切なくなる。彼との思い出がなくなってしまうのが耐えられなかった。
それが全て嘘だったというのは、風香にとってもかなりショックな事だ。
「ごめん………風香。君を悲しませるとわかってやった、俺の責任だよ」
「……………」
今、柊に向けて言葉をかけてしまえば、きっと暴言を吐いてしまう。そんな気がした。
そのため、柊から視線を逸らしむつけながら、彼の話しの続きを待った。
「言い訳していい?」
「ちゃんとした言い訳じゃないと、すごく怒るっ!」
「………大丈夫。ちゃんとした理由ある。美鈴を表に出すには油断させるしかなかった。だから、俺が風香から離れる事が1番だと思ったんだ。だから、風香と離れる理由を考えて思い付いたのが、君の真似をすることだった」
「…………メモリーロスを飲むって事?」
「そう。でも、俺は警察で捜査もしているから記憶を失う事は出来ない。それに、風香を忘れることなんて、考えられなかったんだ。例え、それが一時的なものでもね。だから、メモリーロスを飲んだふりをした。本当は、失踪してる間に姿を見せてくれればよかったんだけど、それは叶わなかったから。だから、記憶を失くしたフリをした。そうしたら、風香の目の前から警察はいなくなる。だから、少しでも油断させようとしたんだ」
「そんな事を考えてたの………」