溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
絶句した風香を見て、柊は申し訳なさそうに眉を下げたけれど、柊の視線を揺るがずまっすぐだった。きっと、柊はこの作戦に自信を持ち、変える予定もなく実行したのだろう。
「それに、風香が頑張って苦しい思いをした。そして、一部記憶を亡くしたんだ。だったら、本当にメモリーロスが飲めないとしても、忘れたフリをして苦しもうと思ったんだよ」
「………それで私が悲しんでても?」
「それはごめん………でも、風香の決意を絶対に無駄にしたくなかったんだ。わかって欲しい」
「…………バカ………何でこんな方法にしたの?」
風香はこぼれる涙を拭きながら、訴えかけるように問いかける。
すると、いつもの優しい笑顔。昔のままの彼の微笑みで、はっきりと言ったのだ。
「…………警察として、君の夫になる男として、決めたことだよ」
「っっ………ずるい………そんな事を言われたら何も言えないじゃない」