溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
顔を手で覆いながら風香はそう言うと、柊は「ごめんごめん」と、風香の頭を撫でて子どもをあやすような声を上げてくれる。
風香には柊の気持ちが痛いほどわかった。
彼は風香の行動を気持ちを、絶対に無駄にしないように、と考えてくれたのだ。
風香の事を守りながら、美鈴を監視したり捕まえたりするのは難しかったのかもしれない。けれど、それを見事に成し遂げてくれたのだ。
風香がメモリーロスを飲んでしまった事に対して、柊は気にしていたのだろう。自分と全く同じ思いをするのは出来ないこと。だが、演技をすることで、自分のの気持ちを少しでも知りたいと思ったのかもしれない。
結果として、風香は寂しい思いをしてしまったけれど、柊は会いに来てくれた。そして、また恋人になった。
「美鈴さんもいろいろ警戒してて時間がかはかってしまったんだ。けれど、風香のおかげで現行犯逮捕が出来たよ」
「うん………」
「じゃあ、俺の事、許してくれる?」
答えがわかっているはずなのに、柊は風香の顔を覗き込みながら、そう訪ねてくる。意地悪だ、と思いつつ「………仕方がないから、許す」と返事をすると、柊はクスクスも笑いながらも「ありがとう」と返事をした。