溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
ほぼ初対面の人に怒られるというのは、大人になってからはなかなか体験出来ないものだ。
怒られる事はわかっており、彼が言っている事も正論であり正しい事だ。だからこそ、風香はショックを受けてしまっている。やはり、いろいろな人に迷惑や心配をかけてしまったのだと。
「青海も記憶喪失のフリをしたり、失踪まがいの演技を部下にさせたり。仕事を増やしてどうする」
「すみません………ですが、俺は正しかったと思っています」
「それは無事に逮捕出来たから言える事だろっ!?」
柊はまだ納得出来ないのか、視線を横にして返事をしていなかった。柊は職場では、こんな感じなのだな、と風香には新鮮な気持ちになっていた。
「銃に立ち向かうお嫁さんに、自分からドラッグ飲む婚約者………本当に俺の部下の恋人は強い方が多い。警察の嫁にはちょうどいいのかもしれないけどな………心配も多いもんだ」
「じゅ、銃に立ち向かう……」
「青海。おまえがしっかりしないと、嫁さんは何をするかわからないからな。しっかり守ってやれ」
「そのつもりですよ」
風香は「何をするかわからない」という言葉にショックを受けつつも、柊の言葉嬉しくなり、思わず微笑んでしまう。
滝川という上司は少し厳しい部分もあるのかもしれない。けれど、柊が尊敬しているのも、伝わってきた。こうやって2人にお説教してくれるのも、心配だからこそなのかもしれない。風香はそう思っていた。