溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
医師の言葉を聞いて、風香は今さらながらに自分が仕出かしてしまった事の恐ろしさに鳥肌がたった。一歩間違っていら、くすりの量があと少し多かったら、今ここにいなかったかもしれないのだ。そうなっていたか思うと、体がブルリッと震えた。
「風香………もう大丈夫だから……」
怖がっている風香を見て、隣で話しを聞いていた柊が心配そうに声を掛けた。風香は「うん……」と返事をする事しか出来なかった。
「症状を聞いた限りで、ですが……もしかしたら、メモリーロスを続けて飲んだ事で、軽い禁断症状が出てしまう場合があるかもしれません」
「禁断症状………」
「激しい頭痛、薬を飲んで楽になりたいと思ったり、悪夢を見たりするかもしれません。離脱症状です」
激しい頭痛と聞いて、風香は少し前の起こった頭痛の事を思い出した。あの痛みがしばらくの間続くという事なのだ。風香はそれを想像して顔が歪んだ。
「あまり頭痛薬は使わない方がいいのですが、我慢出来ない場合は飲んでください。一人では難しい事が多いので………助けてあげてください」
医師は柊の方をちらりと見て、そうアドバイスをくれた。柊は力強く頷いてくれた。
その後、薬を貰い、柊の車で帰宅をした。
風香は手に持った薬をジッと見つめていた。
「怖い………?」
「え、あ………」
柊がこちらを見つめているのに気づいた時には、いつの間にかキッチンの前に立っていた。
ボーッとしたまま車を降り、帰宅していたようだ。