溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「さぁ、寝よう。寝て起きれば治っているんだから」
「うん………柊、ごめんね………」
「ごめんじゃなくて?」
「………ありがとう」
いつも繰り返しているやり取り。
柊の問い掛けに思わず笑みが出た。
「寝るまで一緒にいるから」
「………柊も少し寝て休んで?」
「ダメだよ。勤務中なんだから。夜に帰ってきたら、ね?」
「………うん」
そういうと、風香の横に体を倒してそのまま優しく抱きしめてくれる。
そうされる事で、精神的に安心するからか、風香の頭痛が治まるのだ。不思議な事だけれど、処方された頭痛薬よりも効く。
「………柊………早く帰ってきてね?」
「あぁ……帰ってくるさ。あぁ、そうだ。この症状が無事に終わったら、風香をあるところに連れていきたいんだ」
「え?どこだろう?」
「それは、その時のお楽しみ。ほら、眠くなってきた顔してる」
そう言って、柊は風香の目に触れた。
すでに重くなっていた瞼が温かい彼の指を感じると、自然に閉じてしまう。
寝てしまえば、彼がいなくなってしまうとわかっているので、本当は寝たくなかった。
けれど、体がいうことをきかずに、寝てしまう。その直前に、柊の「おやすみ、いい夢を」と言う柊の声が聞こえ、柊は抗わずに寝ることが出来た。
目を覚ましたら、柊はいないかもしれない。けれど、もう帰ってこない事も、記憶をなくす事もないのだとわかっている。
だからこそ、安心して眠れるのだった。