溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「おうちはここの近くなんですか?あ、でも旅行だから少し遠くでしょうか?」
「趣味は何ですか?」
「好きな食べ物は?」
気づけば、風香が彼に質問し続けるという構図が出来てしまっていた。けれど、柊は嫌な顔1つせずににこやかに答えてくれていた。むしろ、楽しそうだった。それに、そこから話しを発展させてくれるのも上手く、2人は食事よりも会話を楽しんでいた。
緊張していた風香も自然と笑みを浮かべてしまう。それほど、彼には安心させる雰囲気があった。
いや、違う。
彼は青海柊なのだ。
年齢も職業も、趣味も好きなものも、全てが婚約者である青海柊と同じだった。
これが偶然だというのか?そうだとしたら、同じ人が世界に3人はいる、という噂も本当なのだろうと信じられるほどだった。
彼が探していた柊と同一人物だと確信した風香は、グッと手に力が入っていく。
この時間が続いて欲しい。けれど、彼にもう一度優しく「風香」と名前を呼んで、愛の言葉を囁いて欲しいと願ってしまう。
けれど、今の彼はそれを叶えてはくれないのだろう。
彼に打ち明けるべきなのか。
それを迷ってしまい、唇が止まってしまう。
すると、柊は続けて楽しそうに笑った。
「何だか、沢山質問してくれますね?」
「あ、すみませんっ………!」
「いえいえ。楽しいのでいいですよ。あ、でも、俺からも質問してもいいですか?」
「えぇ………それはもちろん」
「風香さんは恋人はいるんですか?」
「え………」