溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
5話「忘れたい記憶」
5話「忘れたい記憶」
どうして、彼は記憶を失くしてしまったのか。しかも、風香の事だけを。
事故にあったのだろうか?けれど、彼は見たところは元気そうだった。それに、彼がいなくなってから1ヶ月は経っているのだ。もしかしたら、事件に巻き込まれた可能性はあるかもしれないので、柊に聞いて見なければと思った。
そして、もう1つの可能性。
それに考え付いた時、風香は「何故、彼が………」と、大きなショックを受けてしまった。
その可能性はないと思いたかった。
「恋人はいらっしゃらないのですね」
「はい………」
いない、と返事をした後の切ない表情は一瞬のものだった。柊は、すぐにニコニコとした表情に戻った。戻れなかったのは、風香だけ。
「俺もいませんよ」
「そ、そうなんですね」
「はい。聞けてよかったです」
その答えは少しだけ安心出来るものであったけれど、やはりショックが大きかった。