溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「俺は、仕事で食事中に席を立たなきゃいけないんですが……もしよかったら、風香さんはゆっくりしていってください。まだ、残っていますし、おいしそうなデザートもありますよ?」
「え、でも………」
「また、会えるはずなので大丈夫です。ここの支払いは俺が貰いますので。もちろん、デザート分も」
「そんな!私も支払います」
「ダメですよ。年上で、しかも俺は男なんですから払わせてください。では、次に会った時にいろいろ聞かせてくださいね。今度は俺が質問責めをしますので」
「…………わかりました。ありがとうございます」
風香は彼の厚意に甘える事にして、チーズケーキも注文させて貰った。
柊は「楽しかったです。では、また」と言って一足先にレストランから出ていった。彼の背中を見送った後、風香は小さく息を吐いて、彼から貰った紙を手に取った。
そこに書かれていたのは、風香が知らないスマホの番号だった。行方不明になる前に使っていたスマホではないのだろう。風香はある可能性を考えてしまい、また涙が流れそうになった。
「お待たせいたしました。チーズケーキとコーヒーになります。お食事はお済みでしたか?」
店員が注文したものをテーブルの上に置いた。まだ風香の前には食べかけのものがあった。
「あ……まだいただきます。済んでいるものだけ下げて貰えますか?」
「かしこまりました」
そう言うと、柊が食べ終えた食具を店員か下げてくれる。
風香は冷えてしまった、パスタとスープに口をつけた。柊がご馳走してくれたものを残すのは嫌だったのだ。