溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「メモリーロスはまだ飲み続けてしまっているようですけど、風香さんに会っていくうちに、少しずつ思い出してくれるかもしれませんから」
「そう、でしょうか?」
「それに、柊さんがフリーになったら、他に恋人つくっちゃうかもしれませんよ?」
「え…………」
「仕事も出来てイケメンで背が高くて色気もあって余裕もある男なんてモテるじゃないですか!あ、俺と付き合ってくれるなら、会わなくてもいいと思いますけど」
「また、和臣さんはそんな事ばかり………」
「だから、本気ですけどね………って、上司から呼び出しだ………」
和臣はポケットに入っていたスマホの画面を見て残念そうに呟いた。
そして、彼が持っていたファイルの中から1枚の紙を風香に手渡した。
「実は風香さんと昨夜電話をして簡単に話した時から、メモリーロスの事は考えていたんです。なので、もし直接話を聞いてもその考えが変わらないものならば、風香さんに渡そうと思って持ってきたんです」
「これは?」
「医療機関などで配られてるメモリーロスの資料です。風香さんも知ってる事が多いとは思いますけど、一応持ってきましたので」
「ありがとうございます」
風香が知っているのは、噂話やネットの情報ばかりで、本当の意味でのメモリーロスについては知らないことが多いと思っていた。風香はありがたい気持ちで和臣からその書類を受け取った。
「俺や柊さんの上司にも今の話は伝えておきます。風香さんは、あまり気に悩まないようにしてくださいね」
「ありがとうございます。和臣さん」
風香は深く頭を下げてお礼を伝え、和臣に見送られながら警察署を後にした。