溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
7話「新しくも切ない恋のかたち」
7話「新しくも切ない恋のかたち」
柊と再会してから1週間が過ぎようとしていた。
風香は、記憶を失くした柊から貰った名刺とにらめっこをして過ごす日々が続いていた。長い間見つめていたため、新しい彼の電話番号さえ覚えてしまったぐらいだ。
電話の画面に彼の番号を入力した後、あと通話ボタンを押すところまで来て止まってしまうのだ。
柊と会って何をすればいいのだろうか?
失ってしまった記憶を話すことが出来ないのだ。会っても意味がないのではないか。
風香はホームボタンを押そうとして、フッとある言葉を思い出した。そう、和臣の話だ。
『柊さんがフリーになったら、他に恋人つくっちゃうかもしれませんよ?仕事も出来てイケメンで背が高くて色気もあって余裕もある男なんてモテるじゃないですか』
そんな言葉だった。
大好きな柊が風香の知らない誰かと恋人になってしまう?
そして、自分との婚約は破棄にして結婚してしまうのではいか。