溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「あ、そのワンピース」
「え………」
「いいですね。ブラウス素材のワンピース。色もくすみピンクっていうのですか?春らしいですね、似合ってますね」
「あ、ありがとうございます」
出会ってすぐにワンピースの事で声をかけられたので、驚いてしまったけれど、やはり昔の事を思い出したわけではないようだった。
こんな事でショックを受けてしまってはダメだ。そう自分に言い聞かせてから、風香は彼を見た。優しく微笑みながら、「じゃあ、行きましょうか。オムライス屋さんと、パンケーキ屋さんどっちがいいですか?」と、選んできてくれた店の話を聞きながら、2人で街を並んで歩く。少し前までは手を繋ぐのが当たり前だったので、思わず彼の指先を見てしまいそうになるがグッと我慢した。
風香はオムライス屋さんを選び、2人でお店まで向かった。
そして、向かい合って座った後は約束のあれが待っていた。
「そうなんですね。風香さんはイラストレーターさんだったんですね。どんな絵を描いてるんですか?」
「いつから絵を描くのが好きだったんですか?」
「絵、見てみたいですね」
こんな風に柊からの質問責めにあっていた。
「いろいろ聞いてもいいですか?」と聞かれたので、「はい」と返事をしたものの、まさかこんなにも沢山聞かれるとは思っていなかった。自分も彼にしてしまったのだから仕方がない、と思いつつも、少し恥ずかしく感じてしまっていた。
けれど、柊は風香の仕事を褒めてくれて、イラストを見せると褒めてくれたりと、話したことをさらに深い話題にしてくれる。話し上手でも聞き上手でもあった。