溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「ふふふ………、ありがとうございます」
それを見て、風香はつい笑ってしまった。
付き合っていた頃も全く同じ事があったのだ。初めて遠出をしたときに、風香は車酔いをしてしまった。彼の運転はとても丁寧なのだが、風香は元々車酔いしやすい体質だった。薬は飲んできたものの、久しぶりのドライブだつたので酔ってしまったようだ。その時にコンビニでいろいろ買ってきてくれたのが、柊だった。それからは、クローブボックスにつまめるようなお菓子を準備してくれて、風香が車でも楽しめるように、酔わないように準備してくれていたのだ。
それを思い出して、風香は笑みが溢れた。
柊の前で素直に笑った瞬間だったかもしれない。
クスクスと笑っていると、横から彼の視線を感じた。笑いすぎてしまっただろうか、とチラリと彼の方を見ると、とても嬉しそうにしながら、風香を見ていた。
「ご、ごめんなさい。笑ってしまって」
「喜んでくれたみたいで嬉しいです。では、行きましょうか」
「はい」
穏やかな雰囲気の中、車はゆっくりと走り出した。柊から貰った飴を1つ口に含むと甘いイチゴの味がした。