溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
9話「アスターステラホワイト」
9話「アスターステラホワイト」
柊が案内してくれたのは、ホテルの最上階にあるおしゃれなレストランだった。柊のおかげで車酔いにならず、レストランには気分良く訪れる事が出来た。
柊と再会した時のバーのように海は見えないが、街の夜景がキラキラと輝いておりとても綺麗だった。
高級な雰囲気に緊張していると「間違っても誰にも怒られないから食事を楽しみましょう」と柊に言われるとホッと安心出来た。
食事を楽しみながら話しをしていると、柊はある提案をしてきた。
「あんまり年も変わらないし、敬語だとなんだかよそよそしいから、普通にしたいなって思っていたんですけど………どうかな?」
「私もその方が嬉しいです」
「よし、じゃあ、もう敬語は終わりね。それと風香ちゃんって呼んでいい?」
「うん。私は………柊さんで」
「なんで?呼び捨てでもいいよ?」
少し不服そうな様子の柊を見て、思わず笑ってしまった。彼には申し訳なかったけれど、この呼び方だけは変えたくなかった。
「年上なんで……それに、柊さんって呼びたいです」
「わかったよ。じゃあ、沢山名前呼んでね」
「はい。柊さん」
くすぐったい気持ちでそう名前を呼んだ。
彼と気軽に離れるのは嬉しい。また、昔の彼に近づいたように思える。
けれど、呼び方をも変えてしまうと、記憶がなくなってしまう前の柊が戻ってこないような気がしてしまったのだ。
だから、お互いに呼び捨てにしていたけれど、風香は「柊さん」と呼ぶことにしたのだった。