溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
まっすぐな視線と優しい微笑み、そしてゆったりとした口調。彼らしい告白だった。
昔と比べてはダメだと思いつつも、彼はやっぱり変わらないなと思う。
どちらの告白も幸せな瞬間だった。
彼からの愛の告白ならば、何度でも受けたいと思ってしまう。
風香は涙が溢れるのをグッと我慢する。
すると、柊は「我慢しなくていいよ?」と言って、彼の目元に指を置いた。
彼が触れたからだろうか。溜まっていた涙がポロリと落ちる。1度流れてしまった涙は止めることが出来ずに、そのまま頬や顎をつたい、風香の腕の中にあった花に落ちていく。
「私も柊さんが好き………好きなってしまいました」
涙声に紛れて、風香は告白の返事をする。
それは、これなら新たに恋人になるための返事だ。
また、こうやって相手の「好き」という気持ちを知る事が出来たのは奇跡なのかもしれない。
また、恋人になれたことへの安心感と、切なさと不安が混ざり合ったぐじゃぐじゃの気持ち。
そんな風香の気持ちをしる事もない柊は、嬉しそうに微笑んだ後、風香の涙を止めるために、小さなキスを落とした。
それが、風香と記憶を失くした柊との2回目の始まりのキスだった。