溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「…………柊、さん…………?」
「そうなんだ。今から誕生日の予定をたてようと思ってたんですよね」
「あ、そうなんですね!楽しんでくださいね。じゃあ、私は予定があるので。風香、またご飯行こうね」
「う、うん………」
いつもと違う柊の雰囲気に気づいたのか、美鈴はさっさと挨拶をして、その場から立ち去ってしまう。
いつも優しい柊が怒ると怖いのは、風香は長い付き合いから知っている。それに和臣からも「仕事では、本当に怖いんですよ!!だから、風香さんと一緒にいる時みたいな笑顔はすごいレアものです!レアキャラですっ!」と、話していたのを思い出す。
風香の前ではほとんど機嫌が悪くなることもないため、彼の反応がどういうものなのか、ドキドキしてしまう。
「あ、あの柊さん……実は私………」
「………風香ちゃん、行こうか」
「…………はい…………」
有無を言わせない雰囲気でにっこりと微笑む柊。口元は笑っているが、目は笑っていなかった。風香は、目が据わった柊に反抗する事も出来ず、彼に手を引かれるままについていく事になったのだった。
彼に連れていかれたのは、とある看板のない店だった。一見はただのマンションのような入り口だが、そこは会員制のカフェだった。
1度柊に連れてきてもらったことがあったので風香は覚えていた。芸能人や政治家が、密会や秘密裏の会合を開くための場所で、秘密は絶対らしい。
そんな所に連れてこられるとは思ってもおらず、風香はおろおろしてしまう。
「あ、怪しいお店じゃない……わけじゃないけど、大丈夫だよ」
「柊さん………それ、全く安心出来ないよ………」
「2人きりになれて、しかも安全な場所だから。それは絶対」
「………信じてます」
風香は苦笑して、彼と共にその店へと入店した。店長に「あなたが仕事以外で使うなんて珍しいな」と驚かれていた。柊は仕事でよくここに来るのだろう。「1番小さい部屋でいいんだけど……空いてるかな?」と聞き、部屋に案内された。
コーヒーを2人注文すると、「すぐに持っていくから、それまで何もしないでて」と、意味深な事を言われてしまい、風香は顔を赤くしてしまう。