溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 「もしかして、宝石が目的?」


 風香が大切にしている祖母から貰ったガーネットのネックレス。とても貴重な物だと聞かされており、風香は祖母から貰った時にそれを大切にしていた。風香の母親は早くに亡くなっており、祖母は自分の形見を孫である風香に渡したのだ。
 濃い赤をした宝石はガーネット。グラスに入った赤ワインをそのまま閉じ込めたような深い味わいの色だ。ロードライトガーネットというものだと教わった。風香は宝石の価値はよくわからなかったけれど、稀少なものだという話しと、祖母が大切にしていたものだった事から、風香も大事にしていたのだ。

 けれど、それのガーネットの事を知っているのは、本当にとても親しい数人だった。
 やはりただの泥棒なのだろうか。

 理由はどうであれ、もし風香が自宅に居る時に侵入されていたら。それを考えると、震えが一層強くなってしまう。



 「………柊………」


 風香は、夜の静かすぎる廊下にずるずると体を落とし座り込んでしまいそうになった。スマホをギュッと握りしめながら、風香は目を閉じた。




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