溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 それなら、どれぐらい時間が経っただろうか。きっと、数分だったはずだが、風香には何時間も一人で待っているような気さえしてしまった。
 遠くから、数人の足音が響いてきた。少しずつ足音が近くなっていく。


 「風香ちゃんっ!?」
 「…………柊…………柊………さん!」


 聞こえて来たのは、ずっと待っていた愛しい彼の声だった。
 風香は顔を上げて、ゆっくりと立ち上がろうとする。そこへ柊が駆け寄ってきた。


 「風香ちゃん。大丈夫だった?」
 「………柊さん。よかった、会えて………」


 風香の体を支えてくれる柊。彼の手が手や肩に触れられ。じんわりと体温を感じる。それだけでも、安心出来てしまう。


 「私の部屋が…………」
 「風香ちゃんが大変な時に電話に出れずにごめん。怖かったよね?」
 「……………うん」


 風香の顔をジッと見た後に、柊は風香の後頭部に手を置き、そのまま自分の胸に引き寄せた。


 「大丈夫。俺に任せて。」
 

 いつもの優しい口調でそう言った後、風香の頭を優しく撫でて、そして「少し待ってて」と言った後、柊は風香の部屋へと向かった。





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