溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
15話「安心の裏側は」
15話「安心の裏側は」
柊は風香が落ち着くまで、優しく抱きしめて背中をさすってくれた。
彼の鼓動や吐息を感じるだけで、風香の涙は次第に収まってきた。
しばらくして、風香は恥ずかしがりながら、柊の体から離れて「ありがとう」と言うと、「もういいの?俺はもっとくっついていたかったけど」と、ニコニコと笑ってくれる。泣いた顔を笑う事なく、自分が抱きしめたかったからだと言ってくれる所が彼の優しさなのだ。
風香の家から持ってきた大きな荷物を柊が持って、彼の住むマンションに入った。
やはり、柊は昔と変わらない、風香が何度も訪れてた部屋へと案内してくれた。疑っていたわけではないけれど、やはり柊は柊なのだと思えた。
「少しちらかってるけど、どうぞ」
「お邪魔します」
柊のマンションは高層階にあった。
風香と婚約した時から柊は引っ越して、このマンションに住んでいたのだ。
風香は何度も来た場所だったが、緊張してしまった。久しぶりに訪れたからかもしれない。けれど、1番の理由は別にあるように思えた。