溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
16話「朝の戯れ」
16話「朝の戯れ」
「風香ちゃん………?」
柊が寝室に入ると、明かりのついた部屋で風香がベットに横になっていた。ベットの縁に座り、そのまま上半身だけがベットに寝ている状態だった。
風香の穏やかな寝顔を見て、柊は安心した。
柊がシャワーを浴びている間に寝てしまったのだろう。無理もない事だ。自分の部屋が不法侵入され、そして経験したこともない不安と恐怖。そして、事情聴取があったのだ。風香は心身共に疲れていたはずだ。そして、もう少しで夜明けを迎えてしまう時間帯。
柊は風香の隣に座り、彼女の頭を優しく撫でた。すると、無理な体勢で眠りが浅かったのか、風香は「ん………」と声を洩らしながら、ゆっくりと目を覚ました。
「………あ、柊さん。ごめん……寝ちゃってた」
「いいんだ。俺の方こそごめん。起こしちゃったね。ほら、布団をかけないと体が冷えるよ」
「うん………」
まだ、ボーッとしている風香を見て、柊は思わず微笑ましく思ってしまう。まるで、子どものように見えたのだ。
うん、と言いながらも体を起こしてからボーッとしている風香の体を支えながら、枕の上まで頭を移動させ、体をゆっくり横にした。普段ならば抱きしめただけで顔を真っ赤にさせてしまう風香だったが、こんなにも距離が近くなっても、反応がない。余程眠たいのだろう。
「おやすみ、風香ちゃん」