溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
うとうとしている彼女に布団を掛けようしたが、風香の手が伸びてきて、柊の袖を掴んだ。
「柊さんは、一緒に寝ないの?」
「俺はソファで寝るよ」
「………何で?また、一緒に寝たいのに………」
「またって、誰と勘違いしてるの?妬けるな………」
「違うよ。………少しだけでもいいから、一緒がいい……」
「わかった。じゃあ、一緒に寝るよ」
泣きそうな顔でそんな風にお願いされてしまっては、恋人として断れるわけもない。
俺だって、君と一緒に寝たいけど、いいの?、とは聞けるはずもない。彼女からお許しが出たのだ。一緒に寝ると言っても添い寝だろうけれど。
もちろん、あんな酷いことがあった恋人に体を求めるつもりもなかった。風香がぐっすりと寝れるように別々の部屋にしようと思っただけだ。けれど、風香が自分と寝る事で安心出来るのならば、いくらでも寝よう。
むしろ、嬉しいぐらいだ、と柊は思った。
自分もベットに体を倒し、布団をかける。そして、目覚ましのタイマーをセットした後、照明を消した。
柊が枕に頭を落とすと、風香はこちらに体を寄せてきた。柊は「今日は甘えただね」と、小さな声で微笑みながら言うと、彼女の体を優しく抱きしめた。
「おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
柊の胸の中で、目を瞑った風香からすぐに寝息が聞こえた。あっという間に寝てしまったようだ。
柊は彼女の髪に顔を埋めると、甘い香りがする。同じシャンプーを使っているはずなのに、どうして彼女はとてもいい香りがするのだろうか。
部屋には、風香の静かな寝息と鼓動が聞こえる。その音を聞いているだけで、柊もすぐに眠気に襲われた。
彼女を安心させるつもりが、自分もホッとしてしまったようだ。
短い穏やかな時間に幸せを感じながら、柊は風香と同じようにすぐに眠ってしまったのだった。