溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
どんなに悲しい夜も、涙を流しても、柊はいなかった。苦しくて、辛かった日々を思えば、頭痛など苦でもなかった。
一人きりになった日々に比べれば、今はどんなにも幸せなのだから。
「柊さん………おはようございます………」
風香は、頭痛で目が上手く開かなかったけれど、彼の顔を見て朝一番に彼に挨拶をした。すると、痛みのせいなのか、涙がポロリと流れ落ちた。
「おはよう。風香ちゃん………」
柊はそう返すと、風香が涙を流した瞳のすぐ下の頬にキスをしてくれる。涙を舐めとるようなキスに、風香の胸がきゅーっとした。大好きな感覚だ。
彼の声と、キスと体温。その優しさを感じるだけで痛みは和らぐのだった。