溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を





 どれぐらい時間が経っただろうか。
 風香はまた、寝てしまっていたようだった。
 フラフラと起き上がり、パジャマのままリビングに向かった。すると、スーツ姿の柊が立っていた。出掛ける所だったのか、鞄と車の鍵を手にしている。


 「柊さん………」
 「あぁ、風香ちゃん。もう、体調は大丈夫?」
 「はい。昨日から、その……いろいろご迷惑をお掛けしてしまい、ごめんなさい」
 「迷惑なんかじゃないよ。一緒に寝れて嬉しかったんだ。俺がぎゅってしたかったからしてただけだって」
 「はい」
 「それより、頭痛は大丈夫?酷そうだから、病院に行くことも考えてたんだけど」
 「大丈夫だよ。ただ………薬を自宅に置いてきたから、取りに戻ってもいいかな?少しだけなら一人でも行けるし」


 風香の提案に、柊は迷った様子で考え込んでしまった。彼はやはり心配なのだろう。それに、体調の悪い風香を一人で出掛けさせるのも気がかりなのかもしれない。


 「ダメかな?」
 「………昨日の今日だからね。仕事終わりでもいいなら、俺が帰ってから行こう。それでもいいかな?」
 「うん!仕事道具は持ってきてるから、ここで仕事しててもいいかな?」
 「いいけど、無理はしないでね」


 すっかり元気になった風香を見て、柊は安心しながらも、苦笑しながらそう言った。
 昨日までショックで泣いてしまい、そして先程は頭痛で起きれないほどだったのだ。彼が心配そうに言うのも仕方がない事かもしれない。
 けれど、それは全て彼のお陰なのだと、風香はわかっていた。



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