溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「考えすぎはダメだよね………。お腹空いたしご飯にしよっ!」
お昼を過ぎた頃、風香は空腹を感じたので、昼食をとる事にした。最近は朝に柊と自分の分のお弁当を作るのが日課になっていた。
今日もその弁当を食べようとした。
「あ……お弁当忘れてきちゃった………」
風香のバックには弁当箱が入っていなかった。外に出るのはなるべくなら避けた方がいいと言われていたので、風香は迷ってしまったけれど、今部屋には食料がほとんどなかった。
不法侵入された時にあった食べ物は、全て処分してしまったのだ。その後は柊の家で過ごしていたため、何もなかった。
「んー………どうしよう。お腹すいたなー………」
今日に限って、朝食は少しにしていたのだ。外に出ることも少なくなってきたので、ご飯の量を減らそうと考えていたからだ。けれど、お昼を食べずに過ごすとは無理なほどお腹が空いていたのだ。
「少しだけなら………いいよね」
風香は、近くのコンビニぐらいなら、と部屋から出ることに決めたのだ。
周りをキョロキョロと見てマンションから1歩外に出た。特に誰も居る様子もなくホッとしてしまう。自分が狙われているわけではないはずだと思いつつも、あんな事があると怖さを感じてしまうものだった。
挙動不審にならないように気をつけながら早足でコンビニまで向かい、おにぎりやサラダ、飲み物やお菓子などを数点、急いで購入してマンションまで戻った。
やはり何もなかった、と、小さく息を吐こうとした時だった。
少し離れた場所にある風香が住んでいるマンションからある男性が出てきたのだ。
その男を見た瞬間に、風香は体が固まってしまった。けれど、その男性から目が離せなくなった。
「輝………どうして、ここに?」
風香の視界に飛び込んできた相手。
それは風香の元恋人である島崎輝だった。