もう一度だけ、キミに逢いたい。
【15.】キミとの出逢い



【伊織side】


あれは確か、俺が小学5年生だった夏。


元々体が弱く、ここ二年ほど入退院を繰り返していた母が亡くなった。


小さい頃から母親っ子だった俺は、何よりショックを隠せなくて。


最初は母が死んだという事実を受け入れることができなかった。


成長した姿を見てほしくてあんなに色々と頑張っていた勉強や習い事にも手がつかなくなった。


母さんの葬式では、ぼーっとして涙さえ見せない俺を親戚はみんなしてきみ悪がっていたが、正直そんなこともどうでもよかった。




母さんが死んだことにより、俺は父さんと二つ下の弟の夏樹の三人家族になった。


だけど、俺ははっきり言って父さんが嫌いだった。


父さんはいわゆる仕事人間で、小さい頃から家にはいつも俺と夏樹と母さんの三人。

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