もう一度だけ、キミに逢いたい。
あの時の母さんの顔は今でも忘れられない。
ごめんね、なんて母さんが謝ることじゃないのに。
母さんにそんな言葉を言わせてしまった自分が腹立たしかった。
それに、あの時気づいたんだ。
寂しい想いをしているのは俺よりも母さんの方だって。
たださえ体が弱いことで色々なことに影響して心細いはずなのに、肝心の父さんは仕事ばっかりで母さんとの時間を全然とってあげていない。
母さんが弱音を吐けるのはきっと、父さんの前だけなのに。
母さんはどんなことがあっても俺と夏樹の前では明るく振る舞っていた。
俺に悲しそうな顔を見せたのも後にも先にもあの一度きり。
入院していた時も、亡くなる少し前に俺がお見舞いに行った時も、終始笑顔で俺の話を聞いてくれた。