もう一度だけ、キミに逢いたい。
* * *
母さんが亡くなって一カ月程経ったある日。
もう夏休みも後半に差しかかっていて、そろそろ宿題に手をつけないといけなくなってきた。
もう大分心の整理はついたし、毎日家のことをやるのにも十分慣れた。
だけど、どうしてもやる気にはなれなかった。
「…はぁ。宿題やんのめんどくせぇ……」
カバンに入れたまま一度も手をつけていない宿題の束をぼんやりと眺める。
俺は別に勉強が嫌いとかではなかったし、母さんを勇気づけようと思う前からも人並み程度にはやっていた。
ただ、俺の中で勉強というものは母さんを勇気づけるためのもの、という認識がどうしても抜けなくて。
やろうと思っても、あれ、どうして俺は勉強なんかするんだ?と心の中にいるもう一人の俺が問いかけてくるようだった。