もう一度だけ、キミに逢いたい。

もう一度慰めたくても、気の利いた言葉の一つもかけてやれない俺に、泣き出してしまった少女を慰めることができるとは思えない。


すると、どこからか若い女性が誰かを呼ぶ声がした。




「ゆりちゃん…!!どこ……!?いるなら返事して……!!」


「…っひかる、ちゃん……?」




思いきり泣いていたはずの少女は、その声にピクッと反応する。


「光ちゃんっ…!どこ…!?光ちゃんっ……!」




誰かを探す声の主の女性と少女は知り合いなのだろうか。


もしそうならば、彼女の名前は“ゆり”ということになる。




「ゆりちゃん……!!やっと…やっと見つけた……っ、はあ……」


少女がその女性のものと思われる名前を呼んでから一分も経たぬうちに、彼女は姿を現した。


俺はその間どうすればいいのか分からず、ただ呆然と立っていることしかできなかった。


< 260 / 471 >

この作品をシェア

pagetop