もう一度だけ、キミに逢いたい。
俺は母さんのあの口癖を聞いて、他の家と自分の家を比べる必要はないんだって思うようになった。
でもその反面、もしかしたら諦めの想いというのも少なからずあったのかもしれないな…
……家族で思い出を作ることに対して。
いくら家族でどこかに出かけるのが難しい状況でも、俺だってまだ小学生。
寂しいっていう気持ちが消えたって言ったら嘘になるから。
「……俺は、今までそんな風に考えたことはなかったです。でも……そうだったかもしれません…」
俺と彼女の間を風がサーッと吹き抜けていく。
ただ、彼女には俺の声が聞こえていたようだ。
「……そっか。ねぇ、きみ。名前はなんて言うの?」
「…俺は月島 伊織と言います。あの、あなたは……?」