もう一度だけ、キミに逢いたい。
食堂へ行こうと、完全に自分の世界に入っていた俺の耳に飛び込んできた声。
俺はその声にピクッと反応してピタリと足を止めた。
……今の声は。
決して大きな声ではないけれど、綺麗なソプラノでどこか凛として聞こえる。
俺がこの五年間、ずっと想い続けてきた彼女……友梨乃のものだ。
まさか……また、告白されていたのかっ……?
「ふーん…やっぱり誰とも付き合わないって噂はほんとだったんだ…」
聞こえてきた、彼女ではないもう一つの声に俺はハッと我に返った。
……こいつは、ヤバイ。
そう、俺の本能は言っていた。
クソッ……!
どこだっ…どこにいる、友梨乃……!
回れ右をして彼女の声が聞こえてきた方へ急ぐ。
すると、案の定体育館裏で、壁際に追いつめられ、男に両手を掴まれて壁に押しつけられている彼女を見つけた。