もう一度だけ、キミに逢いたい。

……って、あんな男のことなんて今はどうでもいい。


それよりも、彼女が優先だ。




「……大丈夫か？」


さっきとは違う優しいトーンで彼女に呼びかける。


「あ…はい…。ありがとうございます」


……っ。


彼女は自分では気づいていないのかもしれないけど、声も体も小刻みに震えている。


俺は、気づいたら目の前の小さな彼女を抱きしめていた。




「……震えてる」

「…っ、え……」




彼女の方は突然抱きしめられたことに驚いたのか、少し戸惑っているようにも見える。


……だけど、彼女は抵抗しなかった。


むしろ、俺に抱きしめられたことに安心しているのか？っていう錯覚さえした。




「……抵抗、しないのか……？」


「あ、ごめんなさい…。人の温もりってこんなに暖かかったんだって、ちょっと思って……」