もう一度だけ、キミに逢いたい。
「……少し、話をするだけならいいですよ」
「…ありがとう」
彼女とまた逢える……それだけなのに、少し頬が緩んだ。
「あの……このこと、他の人には黙っててもらえませんか?わたし、目立ちたくないんです」
じっと、真剣な目で見つめてくる彼女。
…!
相手は真剣に言っているのだから不謹慎なのかもしれないけど、それでも胸が痛いほど高鳴るのを感じた。
……かわいい。
俺は、そんな心の内を悟られないように冷静に返事をした。
「……分かった。誰にも言わないようにする」
「…よろしくお願いします」
彼女は俺の返事を聞いて、安心したような表情を浮かべてペコッと頭を下げると、今度こそその場から去っていった。
俺は、その背中が見えなくなるまで見送った。