もう一度だけ、キミに逢いたい。

じっと俺の顔を見つめてくる友梨乃を、俺も真っ直ぐ見つめ返す。


そして、ゆっくりと口を開いた。






「………俺、友梨乃のことが好きだ」






暖かい風がサアッと俺達の間を駆け抜けていく。


まさか告白されるなんて予想もしていなかったのか、俺を見つめる友梨乃の瞳がひどく困惑気に揺れていた。


…っ、分かってる。


これは想定内の反応だっ……




「……どうして、」


やがて声を発したかと思えば、その声はとてもか細く、弱々しいものだった。




「どうして、わたしのことが好き、なの……?」




……どうして、か。


友梨乃のその質問から察するに、やはり五年前に逢ったことは覚えていないのだろう。


それに、どうしてって言われても明確な理由なんかない。


……ただ、キミの瞳に、キミの涙に、魅せられたことには違いないんだ。

< 313 / 471 >

この作品をシェア

pagetop