もう一度だけ、キミに逢いたい。
『この前は兄さんのこと、嫌いだなんて言って……ごめん…。兄さんが中学入ったころから勉強ばっかでなかなか話せなくなって…。ほんとはもっと話したかったのに、なんて言っていいか分かんなくて、避けちゃったんだ…。この前もほんとはあんなことが言いたかったわけじゃない…。ほんとに、ごめん……』
夏樹に嫌われていたわけじゃなかった。
俺はそれが分かっただけで十分だった。
俺も自分のことばかりで夏樹の気持ちを全然考えていなかったから。
自分の想いは、ちゃんと言葉にしなきゃ伝わらない。
それを身をもって痛感した出来事だった。
「伊織、今日放課後だよな…?」
「……ああ」
やっと……やっとゆりに逢えるんだ。
熱を出して休んでいる間も、そればかり考えていた。
……これから起こる出来事なんて知る由もなく。