もう一度だけ、キミに逢いたい。
みんなに背を向けてもと来た方へゆっくりと歩き出したわたしに、みんなが次々と言葉をかけてくれる。
……っ、ありがとうっ、本当にありがとうっ……
もう何度もみんなに言ったはずの言葉を、胸に手を当ててもう一度心の中で唱える。
……振り向くことは、しなかった。
元の世界に戻りたいという想いは絶対に変わらなくても、やっぱり最後はみんなの笑顔が良かったから。
さっき一人ずつとハグをした時に、わたしはみんなの笑顔が大好きだって言ったら、みんな最高の笑顔で笑ってくれた。
きっと今のみんなは、泣きそうな顔をしているって聞こえてくるトーンの声でなんとなく分かるの。
……だから、振り向かない。
「……みんな、行ってきますっ!」
わたしは、立ち止まって一つスーッと深呼吸をしてから一言そう言うと、秋くんからもらった一輪の花をしっかりと握って、勢いよく走り出した。