もう一度だけ、キミに逢いたい。

この前、古典の勉強は教えたけど、助けられたという表現はなんだかしっくりこないし、大袈裟すぎる。


それに、それだと彼が懐かしそうな顔をすることの説明がつかない。




わたしは、彼の顔をチラッと盗み見る。


相変わらず目を閉じたまま、懐かしそうな顔をしていて、何かを思い出しているようにも見えた。




……!


わたしは、彼のその表情に、心の奥に眠っていた何かが解き放たれたような感覚に襲われた。




『………友梨乃のことが好きだ』


『……ずっと前から好きだった』


『……俺には、あの日からキミしか映らない』




彼に告白された日に言われた言葉が、次々と脳裏に蘇る。


その度に、ドクンドクンと心臓の音がどんどん加速するのが分かった。


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