Limited-lover
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「宮本さんは、サクラさんが新人時代に教育係をされていたみたいですね。」
「んー…まあ、教育係っつーか…。まあ、そうだね。同じ部署だったし。でも…」
腕がほどかれて離れた身体。
弱ながら暖房の効いた室内なのに、何故か少し寒さを感じた。
目の前の宮本さんは、サクラさんを思い出しているのか、穏やかに微笑む。
「サクラは後輩っつーよりもっと近い感じかも。」
『そっか、大事にして貰いなよ』
宮本さんの話をしたときのサクラさんの少し寂しげな笑顔が不意に脳裏を過ぎった。
……もしかしたら、二人はお互いに想い合ってる?
ただ、口に出さないだけで、本当は……。
「…仲良しなんですね。」
「あー…まあね。仲良しって言うか…まあ、親しい感じかもね。」
……そっか。何か分かったかも。
前に私に話しかけてくれたのは、私をフォローするというよりは、サクラさんを助けたんだ、きっと。
敢えて厳しく私に接したサクラさんは「凄い人なんだよ」って。
鼻の奥がツンと痛みを覚えた。
それでも、頑張って笑顔を宮本さんに向ける。
「羨ましいです。そんなにサクラさんと親しいなんて。」
「そっかな。結構面倒くさいよ?手に負えない時も結構あるし。拘り半端ないでしょ?あの人。頑固って言うかさ…」
笑う顔が、凄く楽しそう。
本当に…好きなんだな、サクラさんが。
「 まあ…拘りで言えば、真斗には勝てないかもしんないけど。」
「真斗…」
「ああ、うん。一課のエース、鈴木真斗。あの人は最強だから。」
鈴木…真斗さん。
一課の中心で活躍していて…確か、凄く仕事に対してストイックだって聞いた事がある。
そして…その仕事ぶりに、『キング』と称されるほど、畏怖の念と尊敬を抱く後輩社員が多い人だって事は知っているけど。
そんなキングを…”真斗”と呼び捨てする、宮本さん。
同期…なのかな?
それにしたって、凄い人なんだよね…と改めて思った。
…そんな人に告白し、一週間恋人になって貰った。
私…本当に恐れ多い事したんだな…
「この間のアイドルグループのコンサートを手がけた時の責任者ですよね、鈴木さん。」
「うん。あのプロジェクト成功は真斗のこだわりあってこそだから。」
「でも、そこに関わっていたんだから、宮本さんだって凄いです。」
「あ、それはね、俺も凄いと思う。俺、よくあのこだわりに最後まで付き合ったよなーって。」
宮本さんは立ち上がるとトントンと腰を叩き、それから私に手を伸ばし立たせる。そのまま、その腕でくるりと私を包み込んだ。
「まあ…だから、今、"イイ思い”させて頂けてんのかもね。」
良い思い……?
「頑張った"見返り”があるんですか?」
「そう、まさに"見返り”」
何だろう。
芸能人に沢山会える様になったとか?
次の大きな仕事を優先的に宮本さんに回して貰える確約を取り付けたとか?
一課には二課には無い、面白い制度があるんだな…
そんなことを考えながら、そっと背中に手を回した。
宮本さんの顔が首筋に埋もれることで頬に触れるその柔らかい髪。それが何だか嬉しい。
宮本さんが私をより引き寄せた。
「…麻衣」
ポツリと囁く様に呼ばれ、鼓動が跳ねる。
「は…い…。」
何となく声がうわずった。
「とっとと定時であがってビール飲みに行くよ。」
私を離さないままそんな事を言ってくれる宮本さんに頬が緩む。
「はい、とっとと。」
私もより宮本さんを引き寄せた。
…サクラさんと宮本さんの関係はわからないし、凄い人に告白してしまったのかもしれないけれど。
今、こうやって目の前に居る宮本さんは私に優しいから。
ちゃんと今を大事にしなきゃ。
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「宮本さんは、サクラさんが新人時代に教育係をされていたみたいですね。」
「んー…まあ、教育係っつーか…。まあ、そうだね。同じ部署だったし。でも…」
腕がほどかれて離れた身体。
弱ながら暖房の効いた室内なのに、何故か少し寒さを感じた。
目の前の宮本さんは、サクラさんを思い出しているのか、穏やかに微笑む。
「サクラは後輩っつーよりもっと近い感じかも。」
『そっか、大事にして貰いなよ』
宮本さんの話をしたときのサクラさんの少し寂しげな笑顔が不意に脳裏を過ぎった。
……もしかしたら、二人はお互いに想い合ってる?
ただ、口に出さないだけで、本当は……。
「…仲良しなんですね。」
「あー…まあね。仲良しって言うか…まあ、親しい感じかもね。」
……そっか。何か分かったかも。
前に私に話しかけてくれたのは、私をフォローするというよりは、サクラさんを助けたんだ、きっと。
敢えて厳しく私に接したサクラさんは「凄い人なんだよ」って。
鼻の奥がツンと痛みを覚えた。
それでも、頑張って笑顔を宮本さんに向ける。
「羨ましいです。そんなにサクラさんと親しいなんて。」
「そっかな。結構面倒くさいよ?手に負えない時も結構あるし。拘り半端ないでしょ?あの人。頑固って言うかさ…」
笑う顔が、凄く楽しそう。
本当に…好きなんだな、サクラさんが。
「 まあ…拘りで言えば、真斗には勝てないかもしんないけど。」
「真斗…」
「ああ、うん。一課のエース、鈴木真斗。あの人は最強だから。」
鈴木…真斗さん。
一課の中心で活躍していて…確か、凄く仕事に対してストイックだって聞いた事がある。
そして…その仕事ぶりに、『キング』と称されるほど、畏怖の念と尊敬を抱く後輩社員が多い人だって事は知っているけど。
そんなキングを…”真斗”と呼び捨てする、宮本さん。
同期…なのかな?
それにしたって、凄い人なんだよね…と改めて思った。
…そんな人に告白し、一週間恋人になって貰った。
私…本当に恐れ多い事したんだな…
「この間のアイドルグループのコンサートを手がけた時の責任者ですよね、鈴木さん。」
「うん。あのプロジェクト成功は真斗のこだわりあってこそだから。」
「でも、そこに関わっていたんだから、宮本さんだって凄いです。」
「あ、それはね、俺も凄いと思う。俺、よくあのこだわりに最後まで付き合ったよなーって。」
宮本さんは立ち上がるとトントンと腰を叩き、それから私に手を伸ばし立たせる。そのまま、その腕でくるりと私を包み込んだ。
「まあ…だから、今、"イイ思い”させて頂けてんのかもね。」
良い思い……?
「頑張った"見返り”があるんですか?」
「そう、まさに"見返り”」
何だろう。
芸能人に沢山会える様になったとか?
次の大きな仕事を優先的に宮本さんに回して貰える確約を取り付けたとか?
一課には二課には無い、面白い制度があるんだな…
そんなことを考えながら、そっと背中に手を回した。
宮本さんの顔が首筋に埋もれることで頬に触れるその柔らかい髪。それが何だか嬉しい。
宮本さんが私をより引き寄せた。
「…麻衣」
ポツリと囁く様に呼ばれ、鼓動が跳ねる。
「は…い…。」
何となく声がうわずった。
「とっとと定時であがってビール飲みに行くよ。」
私を離さないままそんな事を言ってくれる宮本さんに頬が緩む。
「はい、とっとと。」
私もより宮本さんを引き寄せた。
…サクラさんと宮本さんの関係はわからないし、凄い人に告白してしまったのかもしれないけれど。
今、こうやって目の前に居る宮本さんは私に優しいから。
ちゃんと今を大事にしなきゃ。
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