Limited-lover
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麻衣を駅まで送って、11時に出勤した次の日。
…麻衣、何時に迎えに行ったら支度出来てるかな。
スマホをいじりながらそんな事を何となく考える。
「最後のミーティング早めようか?」と真斗の表情が、明らかに不思議そう。
まあ…ずっと俺を見てきた人だからね、真斗は。
俺が「早く帰りたい」なんて言い出したら不思議だよな。
真斗と俺の間に置かれている紫色の蘭の花がその香りを微かに伝えた。
「まあ…どっちにしろ、作田さんのプロジェクションマッピングがあれば楽勝だって思うけどね。」
そう言いながら真斗は小さな真鍮製の水差しを取りに行き、丁寧に蘭に水をあげ始める。
「…この子、だいぶ育ったね。」
それを見ながらスマホを置いてそっと指を花びらに添えた。
「ああ…去年俺らが担当した蘭展で貰った時の倍の大きさになったよな。
作田さんが知り合いの花屋に頼んで鉢の植え替えしてくれたせいか、去年より綺麗に咲いている気がするし。」
「ちゃんと合ってる鉢じゃねーと可哀想だって言ってたぞ。」
プロジェクションマッピングの修正を終えた作田さんが、パソコンを閉じ、少し身を乗り出して蘭に向かって、微笑む。
「大きくなったんだったら、受け止める方も大きくしてあげないと。でも、デカすぎてもダメなんだって。ちゃんと合った大きさ。
大きすぎず、小さすぎず。バランス良くが一番らしい。」
…大きすぎず、小さすぎず、ね。
別にただ、作田さんは蘭の話をしただけ、だとは思うけど。どことなく、心の中で苦笑い。
麻衣と俺は…今、結構アンバランスだったりするのかな。
相当俺、ベッタリだもんね。
まあ…口説いてるんだから当たり前っちゃあ当たり前の話なんだけど。
『お夕飯、お弁当でよければ』
でもさ、あれだけ強引にもう一泊させる事にしたのに、そう言ったんだもんね、麻衣も。と言う事は、麻衣にとっても、少しは俺の存在が麻衣の中で近くなってる…はずだって思う。
それほど、アンバランスでもないのかな…。
結局、最後の打ち合わせは、作田さんのプロジェクションマッピングを先方が「明日にでもイベント開催したいくらいです」と大絶賛して、あっさりと終了。次の打ち合わせまでにしなきゃいけない事を真斗と確認して根回しして…それでも7時半には会社を出られた。
家に一度戻ってから、麻衣のスマホに連絡を入れてみる。
……出ない。
これはまだ、頑張ってるって事かな。
頑張り過ぎんなって言ったけど……麻衣は頑張るよね、きっと。
別に俺の為に何かを頑張って欲しいって望みはない。そりゃ、多少の頑張りはお互い必要だと思うけれど。それは、付き合う上で最低限としてって事で。麻衣が俺の為に飯を作るのは、嬉しいけれど、無理して頑張るってのは違うから。
いつ呼ばれてもすぐ迎えに行ける様に支度して家を出て、麻衣のアパートまで向かった。アパートの前について何度かかけたけど、一向に出なくて。でも、部屋の灯りはついてるから、まだ作ってるって判断。
まあ…俺も9時頃って言ったし。いいや、ゲームしながら待ってよ。別に何かを待つ時間は嫌いじゃない。まして、この後、麻衣が作った飯にありつけるわけだから。作って貰ってる俺は当然大人しく待つよね。
うるさいかな?とエンジンを切ったせいか、芯から身体が冷えてきて。
…これだけ身体が冷えてたら、麻衣を抱きしめたらすっごい温かそう。
なんて思い始めた頃、漸く着信が入る。
『す、すみません…』
恐縮しているその声。それに、クッと含み笑いしながら電話を切った。
やっぱり何か温かいよね、麻衣って。
こうやって会話を少し交わすだけでも体感温度が少しあがった気がするんだよ、いつも。まあ、実際触れた方が更に温かいけど。
弁当を見た俺の横に並んだ麻衣の頬を触って、それから唇を重ねる。
柔らかくて、甘いそれに、気持ちが少しだけ逸った。
……とっとと連れて帰ろう。
麻衣も、麻衣が作った弁当も。
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麻衣を駅まで送って、11時に出勤した次の日。
…麻衣、何時に迎えに行ったら支度出来てるかな。
スマホをいじりながらそんな事を何となく考える。
「最後のミーティング早めようか?」と真斗の表情が、明らかに不思議そう。
まあ…ずっと俺を見てきた人だからね、真斗は。
俺が「早く帰りたい」なんて言い出したら不思議だよな。
真斗と俺の間に置かれている紫色の蘭の花がその香りを微かに伝えた。
「まあ…どっちにしろ、作田さんのプロジェクションマッピングがあれば楽勝だって思うけどね。」
そう言いながら真斗は小さな真鍮製の水差しを取りに行き、丁寧に蘭に水をあげ始める。
「…この子、だいぶ育ったね。」
それを見ながらスマホを置いてそっと指を花びらに添えた。
「ああ…去年俺らが担当した蘭展で貰った時の倍の大きさになったよな。
作田さんが知り合いの花屋に頼んで鉢の植え替えしてくれたせいか、去年より綺麗に咲いている気がするし。」
「ちゃんと合ってる鉢じゃねーと可哀想だって言ってたぞ。」
プロジェクションマッピングの修正を終えた作田さんが、パソコンを閉じ、少し身を乗り出して蘭に向かって、微笑む。
「大きくなったんだったら、受け止める方も大きくしてあげないと。でも、デカすぎてもダメなんだって。ちゃんと合った大きさ。
大きすぎず、小さすぎず。バランス良くが一番らしい。」
…大きすぎず、小さすぎず、ね。
別にただ、作田さんは蘭の話をしただけ、だとは思うけど。どことなく、心の中で苦笑い。
麻衣と俺は…今、結構アンバランスだったりするのかな。
相当俺、ベッタリだもんね。
まあ…口説いてるんだから当たり前っちゃあ当たり前の話なんだけど。
『お夕飯、お弁当でよければ』
でもさ、あれだけ強引にもう一泊させる事にしたのに、そう言ったんだもんね、麻衣も。と言う事は、麻衣にとっても、少しは俺の存在が麻衣の中で近くなってる…はずだって思う。
それほど、アンバランスでもないのかな…。
結局、最後の打ち合わせは、作田さんのプロジェクションマッピングを先方が「明日にでもイベント開催したいくらいです」と大絶賛して、あっさりと終了。次の打ち合わせまでにしなきゃいけない事を真斗と確認して根回しして…それでも7時半には会社を出られた。
家に一度戻ってから、麻衣のスマホに連絡を入れてみる。
……出ない。
これはまだ、頑張ってるって事かな。
頑張り過ぎんなって言ったけど……麻衣は頑張るよね、きっと。
別に俺の為に何かを頑張って欲しいって望みはない。そりゃ、多少の頑張りはお互い必要だと思うけれど。それは、付き合う上で最低限としてって事で。麻衣が俺の為に飯を作るのは、嬉しいけれど、無理して頑張るってのは違うから。
いつ呼ばれてもすぐ迎えに行ける様に支度して家を出て、麻衣のアパートまで向かった。アパートの前について何度かかけたけど、一向に出なくて。でも、部屋の灯りはついてるから、まだ作ってるって判断。
まあ…俺も9時頃って言ったし。いいや、ゲームしながら待ってよ。別に何かを待つ時間は嫌いじゃない。まして、この後、麻衣が作った飯にありつけるわけだから。作って貰ってる俺は当然大人しく待つよね。
うるさいかな?とエンジンを切ったせいか、芯から身体が冷えてきて。
…これだけ身体が冷えてたら、麻衣を抱きしめたらすっごい温かそう。
なんて思い始めた頃、漸く着信が入る。
『す、すみません…』
恐縮しているその声。それに、クッと含み笑いしながら電話を切った。
やっぱり何か温かいよね、麻衣って。
こうやって会話を少し交わすだけでも体感温度が少しあがった気がするんだよ、いつも。まあ、実際触れた方が更に温かいけど。
弁当を見た俺の横に並んだ麻衣の頬を触って、それから唇を重ねる。
柔らかくて、甘いそれに、気持ちが少しだけ逸った。
……とっとと連れて帰ろう。
麻衣も、麻衣が作った弁当も。
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