Limited-lover
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駐車場から俺の部屋までの道程。


俺があげた“ゆるネコ”を大事そうに持つ麻衣の手を握ってポケットに突っ込んだ。
一瞬置いて、麻衣の指先が俺の指先を優しく辿るように何度も触れる。
それが心地良く思えて、俺も指を動かしそれを包み込んだ。


『バランス良く』


…多少アンバランスな所はあるのかもしれないけれど。それほどバランスが悪いわけじゃ無いじゃないのかもしれないよな。

エレベーターに乗り込み、頬に触れた俺の指先をまた優しく包み込む麻衣。
明らかに3日前とは違って表情も、言い草も距離が近い感じがする。
もちろん、俺のベッタリ具合に慣れてきたと言うのもあるんだろうけど。

部屋に入ってすぐ、コートを脱いだ麻衣を背中から捕まえた。


あー…やっと心置きなく暖とれる。


相変わらず、あったかくて、柔らかくて…何か良い匂いまでするんですけど。



クンと少し鼻を近づけてから、首筋に唇で触れる。ピクリと麻衣の肩が揺れ、耳がほんのり赤くなる。キュッと唇をむすぶ表情にどうしようもなく、膨らむ欲。


「………。」


……とりあえず、シャワーを浴びよう。


このままだと、確実に押し倒すってギリギリの所で踏みとどまって離れた。

部屋着?

いや、ごめんなさい。
麻衣が普段着ているのを今日着られてみ?もうね、なんやかんや、考えちゃって、結局、俺、襲うからね。

物凄く見てみたいけれど…今日は勘弁してください。


ほら、このフリース、しろねこっぽいよ?これなら、多少誘惑も減るだろうから。
身勝手な考えで麻衣にフリース押しつけてシャワーを浴びに浴室に入る。


「あー…」


熱めのシャワーを顔から一気に浴びた。


“この一週間は手を出さない”って昨日思ったばっかりだけど、本当にキツイ。

明日は最終日。
麻衣にあっさり『じゃあね』なんて言われたら、俺、発狂だな、これ。

今週、結局結構な激務だったから、課長から半休貰ったし…タイミング狙って話せる時に話そうかな。

一旦息を吐き出してから、シャワーを止めて風呂場を後にする。


この日、一日何も食べてないのに加えて、麻衣が作ったって思うと、箸が進む。それを見ていた麻衣が、俺に飯つくるのが『ワガママ』だって言い出して。

…明日で『お試し』は終わり。
絶対、彼女になって貰うから。


なんて、相当浮かれていたんだと思う。


この人の誘惑に負けない様に、ゲームして冷静さを保ちながらも、明日に期待を馳せて、心地良い麻衣の身体を抱きしめ、眠りについた。


まさかの展開があるとも知らず…。


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