Limited-lover
Last day2
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“麻衣だから”
機嫌が良いのか、まだ怒っているのかよく分からない宮本さんの腕の中、おでこをコツンとつけられて、互いの唇が互いの吐息で温かい湿り気を帯びる。
ブーンと少し冷蔵庫の音が部屋に響いた。
「麻衣はさ、俺の事優しいって言ってたけど、麻衣は俺に全然優しくないよね。」
「そ、そう…でしたか…?」
「うん。今も。」
ふわりと唇を再び重ねる宮本さん。
「…結構大変だったんだよ?麻衣と長い時間一緒に居るのも。」
囁かれた言葉と、宮本さんの行動が真逆な気がしてどう反応していいかわからない。
「そ、それは…あの…感謝しています。私の告白に乗っかっていただいて…」
「だから、感謝は要らないって言ってんじゃん。」
鼻筋を強めにくっつけて、それからパクッと唇をまた覆われた。
「と言うかさ…感謝してるって言ってて、頑張った甲斐甲斐しい俺の事、置いてとんずらってどうなの?」
「す、すみません…その…」
「不安だったから?そんなの言い訳だわ。
と言うか、俺は麻衣の言い訳聞いてすっごい空しくなったわ。俺の一週間の努力なんだったんだーって。」
「努…力。」
「おりゃっ」
「痛っ!」
いきなりデコピンされて、思わず目をギュッと閉じた途端、そこを抑える間もなく、手を握られてそのまま少し乱暴に唇がまた塞がれる。
離れた先の宮本さんの表情はいつになく真剣で、それでもどこか色香を放つ。
「…一緒にするなよ。他の誰かと自分を。」
両頬がふわりとその掌で包み込まれた。
「さっきも言ったでしょ?
俺はね。『麻衣だから』こういう一週間を過ごせたんです。他の誰かじゃ絶対同じにはならない。」
私…だから…絶対、同じにはならない。
一気に涙が込み上げて、ポタポタと宮本さんの指に落ちていく。
「さ、サクラさん…」
「出た、サクラ。麻衣は本当に好きだね、サクラが。」
「た、高嶺の花って…」
「ああ…うん。本当にそうだから、サクラは。」
だけどさ、と涙を消そうと優しく目尻を辿るその親指。その先で、今度はフッと頬が緩んで微笑む宮本さん。
「俺からしたら、よっぽど麻衣の方が『高嶺の花』だったけど」
「…………………。」
全く予期していないその言葉をサラリと言われて、頭に届くまでに時間がかかったんだって思う。
ピタリと涙はとまり、瞬きすら忘れる。
「………え?」
「反応遅っ!」
「だ、だって…」
宮本さんが戸惑う私に含み笑いしながら、頬を親指でスリスリと撫でた。それからコツンとおでこをつける。
「感謝…って言うなら俺の方かもね。『高嶺の花』に告白していただいたわけだし。」
「あの…」
「ん?」
「『高嶺の花』の意味をご存知…ググりますか?」
「知ってるわ…って、何このデジャヴなやり取り。」
楽しそうにふわふわと笑う宮本さんの温度と私の温度がおでこで融和する。
…1週間、ずっと思っていた。
“宮本さんの腕の中は、本当に居心地が良い”って。
不意に、宮本さんの腕が私をより引き寄せた。
「麻衣ってさ、すっげー温いよね。」
「た、確かに体温は高めかも…」
「そうじゃなくてさ、“ひだまり”みたいって。」
“ひだまり”…?
キョトンとして首を傾げた私をまた、くっと笑う宮本さん。
それから、微かにまた唇を触れ合わせた。
「俺は、麻衣が好き。」
離れた唇からポツリと囁かれた言葉。
再び微かに触れている鼻先がくすぐったくて
またつけられたおでこがあったかくて
ただ、ただ、涙が溢れた。
「…泣いてるとキスできないじゃん。」
「だ、だって…み、み、宮本さんが…す、す…」
「『スキヤキ』?」
「ち、違っ…」
笑いながらまたその腕で私を引き寄せ抱きしめてくれて、頭を優しく撫でてくれる宮本さん。それに更に気持ちが溢れて、もっと涙がこぼれ、私も宮本さんを抱きしめた。
「…麻衣、俺の視界に時計があるんだけどさ。あの電波時計が狂ってなければ、今は10時。今日が、あと二時間で終了するわけだけど…
どうする?
『一週間だから』って麻衣に言われて俺が発狂するくだりもやった方が良い?」
……発…狂。
思わずクスッと笑ってしまったら、「いや、笑い事じゃないよ?」と少し抱きしめ直された。
「この1週間、本当に頑張ったからね、俺。」
「そ、それは…わかります。」
「いや、麻衣はわかってない。」
「わ、わかって…ます…」
この一週間、宮本さんは本当に私を優しく丁寧に扱ってくれていた。一度だって私をおざなりにしたことも、無下に扱ったこともない。それは、紛れもなく、宮本さんが頑張ってくれていた証拠だから。
「ああ、さっきも言ったけど、礼には及ばないです。この一週間で恩着せた分、今後は麻衣に労ってもらうから。」
唇が軽く触れ合い、それから何度か私の唇をはさみ込む様に角度を変えてくっついて、それから深く長いキスが降ってきた。
その甘い感触に、思わず自ら宮本さんを抱き寄せる。
キスの終わり。
「…言って?麻衣。俺が好きだって。」
柔らかい笑みと甘さを含む囁きに気持ちがキュッと掴まれる。そこに痛みを伴ったけれど、それが幸せに思えた。
『麻衣だから』
宮本さん、やっぱり『ありがとう』です。
…私は、宮本さんだから、こんなに気持ちの揺れ動いた一週間が過ごせた。
幸せも、切なさも、全部……“宮本さんだから”
「宮本さん…大好きです。」
宮本さんのくふふと笑う声が微かに耳に届いた。
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“麻衣だから”
機嫌が良いのか、まだ怒っているのかよく分からない宮本さんの腕の中、おでこをコツンとつけられて、互いの唇が互いの吐息で温かい湿り気を帯びる。
ブーンと少し冷蔵庫の音が部屋に響いた。
「麻衣はさ、俺の事優しいって言ってたけど、麻衣は俺に全然優しくないよね。」
「そ、そう…でしたか…?」
「うん。今も。」
ふわりと唇を再び重ねる宮本さん。
「…結構大変だったんだよ?麻衣と長い時間一緒に居るのも。」
囁かれた言葉と、宮本さんの行動が真逆な気がしてどう反応していいかわからない。
「そ、それは…あの…感謝しています。私の告白に乗っかっていただいて…」
「だから、感謝は要らないって言ってんじゃん。」
鼻筋を強めにくっつけて、それからパクッと唇をまた覆われた。
「と言うかさ…感謝してるって言ってて、頑張った甲斐甲斐しい俺の事、置いてとんずらってどうなの?」
「す、すみません…その…」
「不安だったから?そんなの言い訳だわ。
と言うか、俺は麻衣の言い訳聞いてすっごい空しくなったわ。俺の一週間の努力なんだったんだーって。」
「努…力。」
「おりゃっ」
「痛っ!」
いきなりデコピンされて、思わず目をギュッと閉じた途端、そこを抑える間もなく、手を握られてそのまま少し乱暴に唇がまた塞がれる。
離れた先の宮本さんの表情はいつになく真剣で、それでもどこか色香を放つ。
「…一緒にするなよ。他の誰かと自分を。」
両頬がふわりとその掌で包み込まれた。
「さっきも言ったでしょ?
俺はね。『麻衣だから』こういう一週間を過ごせたんです。他の誰かじゃ絶対同じにはならない。」
私…だから…絶対、同じにはならない。
一気に涙が込み上げて、ポタポタと宮本さんの指に落ちていく。
「さ、サクラさん…」
「出た、サクラ。麻衣は本当に好きだね、サクラが。」
「た、高嶺の花って…」
「ああ…うん。本当にそうだから、サクラは。」
だけどさ、と涙を消そうと優しく目尻を辿るその親指。その先で、今度はフッと頬が緩んで微笑む宮本さん。
「俺からしたら、よっぽど麻衣の方が『高嶺の花』だったけど」
「…………………。」
全く予期していないその言葉をサラリと言われて、頭に届くまでに時間がかかったんだって思う。
ピタリと涙はとまり、瞬きすら忘れる。
「………え?」
「反応遅っ!」
「だ、だって…」
宮本さんが戸惑う私に含み笑いしながら、頬を親指でスリスリと撫でた。それからコツンとおでこをつける。
「感謝…って言うなら俺の方かもね。『高嶺の花』に告白していただいたわけだし。」
「あの…」
「ん?」
「『高嶺の花』の意味をご存知…ググりますか?」
「知ってるわ…って、何このデジャヴなやり取り。」
楽しそうにふわふわと笑う宮本さんの温度と私の温度がおでこで融和する。
…1週間、ずっと思っていた。
“宮本さんの腕の中は、本当に居心地が良い”って。
不意に、宮本さんの腕が私をより引き寄せた。
「麻衣ってさ、すっげー温いよね。」
「た、確かに体温は高めかも…」
「そうじゃなくてさ、“ひだまり”みたいって。」
“ひだまり”…?
キョトンとして首を傾げた私をまた、くっと笑う宮本さん。
それから、微かにまた唇を触れ合わせた。
「俺は、麻衣が好き。」
離れた唇からポツリと囁かれた言葉。
再び微かに触れている鼻先がくすぐったくて
またつけられたおでこがあったかくて
ただ、ただ、涙が溢れた。
「…泣いてるとキスできないじゃん。」
「だ、だって…み、み、宮本さんが…す、す…」
「『スキヤキ』?」
「ち、違っ…」
笑いながらまたその腕で私を引き寄せ抱きしめてくれて、頭を優しく撫でてくれる宮本さん。それに更に気持ちが溢れて、もっと涙がこぼれ、私も宮本さんを抱きしめた。
「…麻衣、俺の視界に時計があるんだけどさ。あの電波時計が狂ってなければ、今は10時。今日が、あと二時間で終了するわけだけど…
どうする?
『一週間だから』って麻衣に言われて俺が発狂するくだりもやった方が良い?」
……発…狂。
思わずクスッと笑ってしまったら、「いや、笑い事じゃないよ?」と少し抱きしめ直された。
「この1週間、本当に頑張ったからね、俺。」
「そ、それは…わかります。」
「いや、麻衣はわかってない。」
「わ、わかって…ます…」
この一週間、宮本さんは本当に私を優しく丁寧に扱ってくれていた。一度だって私をおざなりにしたことも、無下に扱ったこともない。それは、紛れもなく、宮本さんが頑張ってくれていた証拠だから。
「ああ、さっきも言ったけど、礼には及ばないです。この一週間で恩着せた分、今後は麻衣に労ってもらうから。」
唇が軽く触れ合い、それから何度か私の唇をはさみ込む様に角度を変えてくっついて、それから深く長いキスが降ってきた。
その甘い感触に、思わず自ら宮本さんを抱き寄せる。
キスの終わり。
「…言って?麻衣。俺が好きだって。」
柔らかい笑みと甘さを含む囁きに気持ちがキュッと掴まれる。そこに痛みを伴ったけれど、それが幸せに思えた。
『麻衣だから』
宮本さん、やっぱり『ありがとう』です。
…私は、宮本さんだから、こんなに気持ちの揺れ動いた一週間が過ごせた。
幸せも、切なさも、全部……“宮本さんだから”
「宮本さん…大好きです。」
宮本さんのくふふと笑う声が微かに耳に届いた。
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