運命という名の足枷(仮)
「もしも…」
口の中で呟くヒルダ。
徒樹はそれに気が付き、近寄った。
「もしも、さ」
徒樹に聞こえる様に、ヒルダは言う。
「僕達が誰かに買われたとして、徒樹は…どう思う?
その、“飼い主”っていうか、ゴシュジンサマの事」
ヒルダは、酷く憎々しげに「ご主人様」と言った。
「どう、って?」
首を傾げる徒樹。
「だから、…人を金で買った ならず者だ とか──、ああ違うか、僕達は人じゃなかった。
野良犬以下だった。
まあ、“ならず者”と、“私財を投じてまで救済した聖人君子”。
僕は──」
「俺は“聖人君子”だと思うよ」
ヒルダの答えを聞かず、きっぱりと答えた徒樹。
ヒルダは目を丸くした。
ヒルダの答えは違っていたからだ。
徒樹はそれっきり黙ってしまったので、ヒルダも黙った。