運命という名の足枷(仮)
「眠れんか、ヒルダ」
旭宇の声に、ヒルダは泣きそうになる。
いつもなら、徒樹が声をかけてくれる。
「ん…」
小さく頷くヒルダの頬に、そっと手を添える旭宇。
彼もまた、涙をこらえていた。
「帰りたがってた、徒樹は…」
旭宇の手を軽く掴み、ヒルダは旭宇の掌を目蓋に押し当てる。
熱い涙が、掌を濡らす。
「故郷の、…日の本に……徒樹………は……」
小声で呻くヒルダの頭を、強く撫でる旭宇。
「でも、帰れなかった。これからも、ずっと、帰れないんだ。ずっと………」
頬に涙が伝う。
それは、旭宇の涙で、ヒルダの涙でもあった。