来たれ!霊媒戦線!
《1話前編》
ある昼下がりの午後
少し大きめのナップサックを背負い街中を淡々と歩く男の姿がそこにはある。
(皆さん初めまして僕の名前は大木 礼-オオキ レイ-いたって平凡で大人しい性格の...まぁいわゆる平和主義者ってやつです。)
通行人「ぅ。。。」「ゎっ!」
通りすがる人々が礼を避けて行く
礼(地元の高校からまぁ色々とありまして千葉県の高校へと2年の頭から転入することになりました。友達できるかな~)
地図を取り出し場所を確認する。
礼『ん?もう少し先か?てかこんな所にアパートなんてあるのか?』
ドスッ!!
礼『おっと』
地図を見ながら歩いているせいか人にぶつかる
ヤンキー「おいおい兄ちゃん!どーこ見て歩いてんだぁ?あーん?......ぇ!?」
そのヤンキーは礼の姿を見て一瞬息を飲む
そこにはガタイが良く目付きの悪いリーゼント頭の男が立っていたのだ。
ヤンキー(な、な、なんだーこいつは?ド田舎のヤンキーか?ぃゃ!いやいや一瞬立ち竦んでしまったが所詮は見かけ倒し!)
ヤンキー「おい、てめぇ何ぶつかってんだ!あぁん?」
ヤンキーは礼の胸ぐらを掴む
ドーーンッッ!!
がヤンキーは見えないスピードで殴られ一発KO
ヤンキー「......ぁ"...フラグ回収早す..ぎ...」
礼『チッ糞が、一発で気失いやがってアパートの場所聞こうと思ったのによ』
礼(ぁ...どーも改めてだが自己紹介するぜ、俺は 大木 礼 根っからのクソヤンキーだ中学時代から気に食わない奴は片っ端から倒し毎日暴れ回っていた来日も来日も喧嘩をしない日は無かった、気が付けば俺に向かって来る奴もいなくなり地元ではいつしか俺の通り名はゼロと言われる様になった名前が礼=0であることともう誰も喧嘩を売れない存在であることそして友達がいないという意味でゼロと付けられたらしい正直仲間で群れるのは苦手だ、だからずっと一匹狼として俺は生きて来た、だが!...)
礼『お!ここか!』
高くて立派で高級そうなアパートの前に立つ
礼(そう!俺は変わるんだ!新しい高校!そして最高のダチ!んでもってー...)
礼『んー夢の1人暮らしか~!!くぅー!!...よし!!』
礼は夢膨らむ中アパートへ立ち入る
ピーンポーン♪
「はーい今行きますね~」
少しして可愛らしい女の子が扉からやって来る
その姿はまるで天使の様に礼には見えた。
「すいませんお待たせ致しました。今大家の母が不在で私が変わりに伺います。娘の橘 奈々-タチバナ ナナ-と申します。」
礼『あ、あ、あのーすいません!今日かりゃこ、こちらにお世話になりましゅ、大木 礼ですぅ!』
礼(やっべーめっちゃ可愛い~目は二重でぱっちりしてるし細身で華奢な体どこか呆気なさを感じる容姿に加え黒髪ロング!チキショー女の子に体勢ねーから超緊張するぜ!うぉーー)
奈々「あの~」
礼はふと我にかえる
礼『おぅ!』
奈々「すいません今日うちに移転される方はいらっしゃらないのですが...」
礼『おぅ!』
奈々「ですから移転予定は...」
礼『おぅ!...え!?』
礼は地図を見直す
礼『ここって高見荘って言うんじゃ?』
奈々「いえ家のアパートは橘荘です、えっと、あの高見荘は...」
と奈々は隣の今にも崩れそうでさびれたアパートを申し訳なさそうに指差す
礼『・・・』
奈々「です。」
礼『です。...よね、アハハこりゃすまなかったハハッハハハ...』
奈々「では」...チラッ
彼女は不自然そうに一瞬礼の背後を覗く
ウィーンカシャン♪
自動ドアが閉まった。
と同時に礼は落ち込む
そのまま隣のアパートへと足を踏み入れる
礼『はぁ~そりゃそうだよな~月の家賃が5000円って言ってたからな、んまぁ外見はボロいが5000円なら格安だぜ!』
階段には草が伸び上へ上がりづらくなっているさびれた廊下は所々下に抜け落ち天井の電球は割れている
礼『軽いサバイバルだな、大家は何処だ?そもそもこんな所に人が住んでるのか?まぁいい』
礼は郵送で送られて来た鍵を取り出し自分の部屋番号を探す
礼『えーと201、202、203、205、206お!ここだ、204は無いのか』
ガシャ!キュウィーン...
立て付けの悪い扉がゆっくりと開く
中は四畳半の薄汚れた畳と押し入れ煤抜けでコンロの無いキッチンに何故かブラウン管テレビと丸い小さな机が備え付けで置いてある
礼『おーまぁ悪くわねーな』
礼が中へ入ろうと玄関口に立った瞬間ふと後ろに気配を感じ咄嗟に殴りかかる
ドーーン!!
「うゎー!!」バタッ!!
礼『あ、、わりぃ癖で反射的に...(またやっちまった)』
「痛っ~」
礼『あーのすまねぇ!』
「ふふっ...やはり噂通りだ」
礼『?』
「大木 礼 通り名のゼロはだてじゃないな」
とゆっくり立ち上がる
見た目30代くらいの髪は長くどこか貫禄のある風貌のおっさんだ
礼『なんだ?あんたは?』
「ふぅごめんねちょっとした興味本意だよ」
と言うと胸ポケットに手を入れる
礼はまた反射的に身構える
「アハハ大丈夫大丈夫、はい」
差し出されたのは名刺だ
礼『ん?...(漢字が分からん!)なんて読むんだ?』
「おぃw 霊媒師って読むんだよ職業上の名は真-シン-で通している、あとちなみにここの大家だ」
礼『...ってえー(マジか~初っぱなから大家ドついちまった~やべぇ)す、すまねぇ何でもするから追い出さないでくれ!...(ん?あれ?俺今言っちゃいけないセリフを)』
シン「ん?今何でもするって言ったよねぇ」ニヤニヤ
礼『(言っちまってた~)あ、いゃその!』
シン「じゃ仕事手伝って」
礼『は?』
シン「霊媒師のさ」
礼『あのな~俺は幽霊見えねーしよぉもっとこう力仕事とかなら』
シン「あーいたーいいてててーさっき殴られた傷がぁー」
と殴られた部分を押さえながら急に座り込む
シン(さーて大木 礼!これが演技だと分かっていてもお前は立場的にも協力せざるおえないはずだ)
礼はゆっくりと目の前までやってくる
礼『おーいおっさんよぉ』
威圧感が半端ない
シン「ふぇ?」
礼『てめぇみたく人の弱みや失対につけこむ奴が俺は大っ嫌いでさぁちなみにさっき言ってた興味本意って意味はなんだ?』
シン「えーとぉね...あれは~」
礼『そもそもてめぇ俺がクソヤンキーのゼロだと分かっていて背後にわざと立ったろ?』
シン「ぃや~わざとってそんなわけ無いですよ~」
礼『俺はなぁ分かるんだよお前殴られる前提の受け身を無意識でとっていたぜ、自分で言うのも何だが俺は如何なる場面であっても相手を一発で気絶させる殴り方を自然とやっちまう -冒頭のヤンキーとの回想シーン- そう、お前みたくあらかじめ構えてない限りはな!』
ドーーン!!!
シン「グォーーーー!!!」
シンは蹴り飛ばされる
シン「イテェェーこれはヤバ...い」
礼『おっさん!手は抜いてやった、これで俺を追い出すならそうしてもらって構わねぇ!ただそれまではこの部屋使わせてもらうぞ』バンッ!!
勢いよく扉を閉める
シンは寝ながらゆっくりと煙草を取り出し一服する
シン「すー、ふぅ~、、、ん?」
空からポツリと雨が降って来た
シン「雨か、ふぅ~、不吉だね~」
そんな中隣の橘荘から奈々も窓越しに高見荘をじっと見ている
-高見荘206号室-
礼は殺風景な部屋で一人寝そべっている
礼『あ~やっちまった~明日から新たな高校ライフだってのに早くも住む場所すら失いそうだぜ...雨か』
外の滴る雨をじっと見ているとなにか懐かしい記憶が不意に甦る
それは礼が幼き頃当時いじめられっ子だった礼に雨の中土まみれに汚れた身へ手を差し伸べてくれた温かな記憶
うっすらとしていて断片的にしか覚えてないが...
礼(あれは...なんだったんだろ?)
礼『って今はそんな事じゃなくて今後だよ今後!』
とスマホの時間を見る[16:24]
礼『まぁとりあえず飯だ何か買って...』
外の雨を見る
礼『傘ねーよ!...あ、そうだ』
鞄から非常用のカップ麺を取り出す
礼『まぁ足らねーが仕方ねぇ』
カップメンを開けながら台所へ向かう
礼『ってコンロがねーよ!!』
礼は部屋を見渡す
台所の収納スペースも開けてみる
礼『やっぱねーか~...ん?』
少々錆びれた包丁が2本置いてある
礼『これじゃ使えね~まぁ俺料理しねーけど』
礼は諦めて畳部屋へと戻る
何気なくテレビをつけてみる
ザーー、、、
礼『おいおいまさかのアナログかよ』
プチィ!
テレビを消し座り込む
礼『雨止まねーかな~、はぁ~...ん!?』
少し開いている押し入れの隙間からコンロの様な物が見える
礼はすぐに立ち上がり押し入れを勢いよく開ける
ガーー!!
そこには一人用のコンロとありがたいことにガス菅まで付いている
礼『ありがてー、こりゃまだ使えそうだ!...ん?』
押し入れの奥に熊のぬいぐるみが置いてある
礼『あーん?なんだこりゃ?』
とぬいぐるみに触れようとした瞬間だ
外に稲妻が走る
ビカーンッッ!!!
「フレ...フレル..ナ...」
礼『ん?』
何処からともなく声が聞こえる
次の瞬間後ろの机が礼に飛んでくる
礼は反射的に避ける
礼『うぉ!ぁっぶね!』
すると熊のぬいぐるみが宙に浮き揺れながら台所へ向かう
礼『な、なんだ?ありゃ?』
ドーーン!!
そのタイミングで玄関が開く
そこにいたのは自称霊媒師のシンだ
シン「礼くん!やはり君はすごい!」
礼『おっさん!』
シン「ようやくワタシも仕事ができるよ!」
シンは自分の内ポケットに素早く手を入れる
「サセ...ナイ!」
熊のぬいぐるみはシンを浮かし外へと突き飛ばす
シン「う"ぉ!!」ドーーン!!
背中を打ちつける
熊のぬいぐるみはその勢いで先ほどの錆びれた包丁を2本浮かせ礼に向かって投げつける
シン「礼くん!!!」
礼は微動だにしない
グサッッ!!!
一瞬時は止まる...
「フフフッうふふふふ!」
...
礼は動くことなくじっと目をこらし集中していた、まるで眼鏡のピントを合わせるかのように...そして...
礼『 ...見えた!!! 』
そこには熊のぬいぐるみを抱いた可愛らしい少女が立っていたのだ
シン「大丈夫なのか?礼くん!」
包丁の一本は礼の脇腹をかすり血が滲む
もう一本は腕に刺さったまま状態だ
礼は気にせずじっと少女を見ながら歩き始める
「え?」
少女は近づいて来る礼に一歩引き怖がる
「イ...イ...イヤーーーーー!!!」キーン♪
その高音と共に部屋にある畳や靴といったありとあらゆる物が宙に浮く
シン「マズい!」
「こないでーーーー!!!」
礼を全力で押さえ込む
礼『!』
が礼は全く気にせず少女へ迫る
「そ、そんな!どうして?イヤッ」
ヒョコッ!!
少女は後ろへ躓き尻餅をつく
礼が目の前までやってくる、すごい威圧感だ
「ご、ご、ごめ...んなさい」
礼が手を振り上げる
「きゃ!」
少女は咄嗟に身を小さくし熊のぬいぐるみを守る
ふわぁっ♪
「!?」
礼は少女の頭を撫でようとする
礼『おー!!すげーー!!くっきり見えるのに触れねーぜ!』
何度も霊体の少女へ触れようと試みるがまるで煙を触っているかのような感覚だ
「?...ちょっと!どこさわってんのよ!///」
礼『いゃだから触れねーんだって』
「はぁ...」
少女は力が抜け腰を落ち着かせる
目を閉じ暗い中自分が幽霊であることを再認識する
...
すると何処からともなく声がする
シン「よくやった礼くん!」
シンは内ポケットから御札の様な物を取り出し少女へと掲げる
「キャーーーーーー!!!!」
急な叫び声と共に少女の身が光に包まれ発光し始める
礼『!』
その眩しさに礼は腕で目を押さえる
光は窓の外にまで神々しく漏れ渡る
奈々「!?」
橘荘から見ていた奈々が異変に気づいた
奈々「・・・フフッ」
奈々はじっと光を見つめ不適な笑みを浮かべる
-高見荘-
ギラーー!!ギラギラーーーーー!!!!
さらに光輝く少女
「ア"ーーーーーーー!!!!」
シン「礼くん!そこは危ない!下がって!」
礼『・・・』
礼は目を閉じながら大きくその場でジャンプする、ザッ!!
シン「よし!あとは任せe...」
ドーーーン!!!!
礼は少女を頭上を軽々飛び越しシンへ鋭いジャンピングキックを放つ
シン「グォーーーーー!!!!」
その瞬間少女の目に映る光景がスローモーションになる
少女の目の前に礼がゆっくりと着地する
その姿は少女が大好きだった自分のお兄ちゃんの姿だった
「オニィ...チャン...」
スタッ!
礼は見事な着地と同時に目を開ける
礼『ふぅ』
「どぅ...して?」
礼『ん?』
礼は少し考える
礼『さぁ分かんね俺の体にでも聞いてくれ』
「?」
少女はキョトンとする
吹っ飛ばされたシンがゆっくり起き上がる
シン「れ...礼くん、ハァハァ...なぜなんだ?」
礼『おー!おっさん意識あるのか?やっぱりあんた人並み以上に丈夫な体してんなー』
シン「でっしょーアハハ良くお前の前世はサンドバッグだよねって言われるんだ~ハハ~じゃなくてーー!!」
礼(こいつ元気だな)
シン「礼くん!そいつは悪霊だぞ!見た目はいたいけな少女に見えるかもしれない!だがな..」
礼『なぁおっさん!...ぃゃ霊媒師とやら、まぁあんたの仕事を邪魔したことは詫びるすまなかった』
・・・
シン「...え?君が謝るのかい?」
礼『大人の仕事にケチ付けちまったんだ詫びぐらいは入れる、おっさんにとっちゃこれが生きて行く上で食い扶持なんだろ?』
シン「まぁ...うん(意外に常識はあるんだな)」
礼『正直俺も体が勝手に動いちまっただけで別にこれと言って理由もねぇ』
礼はふと少女を見る
礼『なぁおっさん、この子はどんだけ危険なんだ?』
シンは蹴られた腹を押さえながら考えた様な深いため息をつく
シン「はぁ...」
シンはまた煙草を取り出しゆっくりと吸い始める
シン「ふぅ~...どれだけってこともないが基本悪霊は皆危険な存在だよ」
礼『ほぅそうかい、なぁガキんちょお前名前は?』
「む!ガキじゃないわ!私は14才の時霊になったのよ!名前はサナ!名字は忘れたわ」
礼『は?お前どう見ても小学生だろ?』
サナ「失礼ねー!しかも霊体期間合わせたらあんたよりも長く生きているのよ!」
礼『ほっほーま!ガキには変わりねーがな』
サナ「むっかー!!」
サナはまた周りの物を浮かし始める
礼『おぅ!まだ遊びたんねーのか?』
シン「君たち!」
礼 サナ『「何?」』
煙草を吹かす
シン「すーふぅ~はぁ...まずはこれからの事を話そう の前に礼くん君について話して置かなければならない事がある」
礼『あん?なんだよ?あ!まさかもう出ていけってのか?』
シン「いやいやむしろその逆だそもそも礼くんをこの高見荘へ来るよう裏で仕向けたのはこのわたしだ」
礼『え?』
シン「地元でゼロと呼ばれた伝説のヤンキーがこの近くの高校への編入試験を合格したと聞いてね不動産に根回しをして超格安物件を個人的に提供したのさ まぁ一般人なら普通怪しむ所だが礼くんならすんなり食いついて来ると踏んでね」
サナ「礼wあんた単純すぎねww」
礼『ぅ、うっせー//』
シン「でここからが本題だ、礼くん君には力がある」
礼『まぁ喧嘩ばかりしてたからな』
シン「いゃ腕っぷしだけじゃない精神力の方だ」
礼『は?』
サナ「礼、私はあなたの強すぎるオーラで目覚めたのよ」
礼『なんだそりゃ?』
シン「礼くんからは他と比にならない程のエネルギーが出ているのさ、いや垂れ流し状態と言った方がいいかな そのエネルギーは普段寝ている霊を呼び覚ますんだ」
礼『ん?ちょっと待ておっさん!普段寝てんならその時に除霊でも何でもすればいいじゃねーかよ』
サナ「無理よ私たちは眠る=存在を消すことができるの だから除霊は愚か認知すらできないわ私もそこの怖いおじさんに2~3回見つかって存在を消さなかったら危なかったんだから!」
シン「あの時はもう少しだったんだけどね~ごめんね~」
サナ「それ何に対してのごめんよ!Σ( ̄□ ̄;)」
礼『なるほど何となく理解はした。まぁこのアパートへ手招きされたのは構わない今後も住めるならそれでいい、ただ!おっさんの手伝いはしない』
シン「えー礼くんワタシと君の仲じゃないか!共に悪霊を除霊しよう!ほら霊も未練を残したままこの世にいても、さ!」
とサナを見る
サナ「む!」
礼『ここまで尺的に15分も経ってねーのに仲もクソもねーだろ』
シン「まぁまぁ( ´∀`)それに礼くんは悪霊との接触で霊が見えるようになった、後天的に見えるケースはなかなか珍しいぞ~!」
サナ『ちょっと!悪霊扱いするんじゃないわよ!これだから霊媒師は嫌いなの!』
礼『なぁそもそも悪霊ってのは何をもってそう言うんだ?』
シンは煙草の煙を吹かしサナへと煙草を向ける
シン「簡単だよこの子みたいに能力をもっているのが悪霊さ」
礼『能力?』
サナ「ほらこれよ」
と周りの物を浮かす。
礼『ほぅ』
サナ「私の能力はこうして物を浮かして攻撃するの」
礼『アハハwこんなので攻撃できんのかよw』
サナ シン「・・・」
サナとシンは血の滲んだ礼の脇腹と腕にまだ刺さっている包丁を見て目が点になる
シン「ゴホンッ!礼くん!まずはその傷の手当てだ」
礼『は?』
礼はようやく腕に刺さったままの包丁に気づく
礼『うぉーなんじゃこりゃ!?』
サナ「え?あんた本当に気づいて無かったの!?」
礼『おぅ、そうかあの時か~サナもなかなかやるじゃねーか』
と礼は腕の包丁を勢いよく手で引き抜く
シン「お、おいもっと慎重に」
礼『ん?』
サナ「あんたどんな神経してんのよ!」
礼『刺した張本人に言われたかねーがまぁ喧嘩で毎日傷は付き物だったからな、この程度なら気にならね』
シン(こりゃ想像以上の人材だ、まぁこの調子じゃすぐに...)
シンは彼を中心にこれから起こる波乱を里っていた
礼『で?つまりそういった能力を持たない霊は普通の霊って訳か?』
シン「ん?まぁそうだな」
礼『なら悪霊ってのも大したことねーな』
サナ「バカね~私の能力はこうして物を浮かすだけだけど他の子はもっとヤバイのが沢山いるんだから!」
シン「悪霊によってその使える能力も力の程度も異なるんだよ」
礼『ふーん、まっ俺には関係無いがな』(ふぁーん)
眠そうにあくびをする
サナ「何言ってるのよあんたこれから死ぬかもしれないのよ」
礼『...ふぇ?』
シン「確かに今の状態は非常に危険だ礼くんが近づくだけで悪霊を刺激しこの子みたく攻撃して来る可能性がある」
礼『待て待て今まで生きて来て んな事無かったぜ?』
シン「それは今まで認識をしていなかったに過ぎない霊は自身を認知されてないと分かれば何もしない 、すーふぅ~礼くん人ってのは不思議でね物事を理解してしまうと事情が大きく変わってしまうんだよ」
礼『なら見つけても とことん無視すりゃいいってことか』
サナ「あまいは私たち幽霊は人間以上に敏感よ、いくら見てみぬふりをしても感覚的に認知しているかどうかぐらい分かるわ」
礼『はぁ?』
サナ「礼!恨むならこの霊媒師を恨むのねあんたの今後の平穏な生活を全て奪ったのよ」
と少し悪い顔でシンを指差す
シン「ぅ"ッ悪霊め これはわたしも計算外の出来事だ、確かに非はあるが...」
礼はサナの頭にふわっと手を乗せる
サナ「え?//」
礼『ばーか恨んだりしねーよ たしかにお前みたいなガキが寄ってくんのは迷惑だけど』
サナ「むかっ」
礼『けどまぁいままでも敵だらけの人生だったしな今さら一つ二つと障害が増えた所で俺の生き方は変わらねーよ それにいない者が見える訳じゃなくて元々そこにいる者が見える様になっただけじゃねーか、んなの大した違いじゃねぇよ』
サナは大好きだったお兄ちゃんの姿をまた礼に重ねていた。
サナ「し、仕方ないわね他の子に襲われないよう私が礼の側にいてあげるわ!」
礼『ほーそうかそうかー、って!なんでだよ!』
シン「ふぅ~うーん、元来悪霊と部屋を共にするなんて霊媒師としては止めるべきだが...まぁ異例事態だしな検証する価値はある、ただし礼くん!悪霊は決して信用するなよ」キラーン
とキメ顔で礼を見る
礼『キラーンじゃねーよ!何話し進めてんだよ!』
サナ「あら霊媒師さんともあろう方がどういう風の吹き回しかしら?」
シンは本日8本目の煙草を吸い吹かす
シン「ふぅ~勘違いするなよ悪霊お前らに善意の心があるとは思ってないさ もしも彼に危害を加えた場合は問答無用で消すからな」
サナ「フフフッそれでいいのよ霊媒師!私たちは決して相容れない関係よ」
シン「ふぅ~...そうだな」
礼『いやいやいや!お前らの関係性の話しなんてどーでもいいんだよ!冗談じゃねーぞ!俺にガキを養うだけの余裕なんて経済的にねーんだよ食費だってばかになんねーしよぉ』
サナ シン「「いやそこかよw」」
サナ「はぁあのね私は幽霊よごはんも食べなければお風呂も入らないわ」
礼『え?風呂ぐらい入れよ』
サナ「入れねーよ!( ̄□ ̄)」
シン「まぁ礼くん、言う通り経済的な面は心配は無いさ」
礼『なら構わねーよ』
シン「いいのかい!あー、勧めておいて何だがその悪霊が礼くんの隙をみて襲う可能性だってあるんだぞ?」
礼『そうかそりゃ楽しみだ』
とサナの頭をふわりと撫でる
サナ「そ、そんなことしないわよ//」
礼『なーんだ残念だな~ハハ...』
サナ「なにからかってんのよ~...」
二人の言い合いは続く
そんなやり取りを遠目で見ながらシンは思う
シン(伝説のヤンキーゼロ大木 礼 もしかしたら彼が霊と人との新たな可能性を指し示してくれるのかもしれない)
雨も止み晴れ間が差す空を見つめシンは最後の煙草を吹かす
シン「ふぅ~...」
《1話中編へ》
ある昼下がりの午後
少し大きめのナップサックを背負い街中を淡々と歩く男の姿がそこにはある。
(皆さん初めまして僕の名前は大木 礼-オオキ レイ-いたって平凡で大人しい性格の...まぁいわゆる平和主義者ってやつです。)
通行人「ぅ。。。」「ゎっ!」
通りすがる人々が礼を避けて行く
礼(地元の高校からまぁ色々とありまして千葉県の高校へと2年の頭から転入することになりました。友達できるかな~)
地図を取り出し場所を確認する。
礼『ん?もう少し先か?てかこんな所にアパートなんてあるのか?』
ドスッ!!
礼『おっと』
地図を見ながら歩いているせいか人にぶつかる
ヤンキー「おいおい兄ちゃん!どーこ見て歩いてんだぁ?あーん?......ぇ!?」
そのヤンキーは礼の姿を見て一瞬息を飲む
そこにはガタイが良く目付きの悪いリーゼント頭の男が立っていたのだ。
ヤンキー(な、な、なんだーこいつは?ド田舎のヤンキーか?ぃゃ!いやいや一瞬立ち竦んでしまったが所詮は見かけ倒し!)
ヤンキー「おい、てめぇ何ぶつかってんだ!あぁん?」
ヤンキーは礼の胸ぐらを掴む
ドーーンッッ!!
がヤンキーは見えないスピードで殴られ一発KO
ヤンキー「......ぁ"...フラグ回収早す..ぎ...」
礼『チッ糞が、一発で気失いやがってアパートの場所聞こうと思ったのによ』
礼(ぁ...どーも改めてだが自己紹介するぜ、俺は 大木 礼 根っからのクソヤンキーだ中学時代から気に食わない奴は片っ端から倒し毎日暴れ回っていた来日も来日も喧嘩をしない日は無かった、気が付けば俺に向かって来る奴もいなくなり地元ではいつしか俺の通り名はゼロと言われる様になった名前が礼=0であることともう誰も喧嘩を売れない存在であることそして友達がいないという意味でゼロと付けられたらしい正直仲間で群れるのは苦手だ、だからずっと一匹狼として俺は生きて来た、だが!...)
礼『お!ここか!』
高くて立派で高級そうなアパートの前に立つ
礼(そう!俺は変わるんだ!新しい高校!そして最高のダチ!んでもってー...)
礼『んー夢の1人暮らしか~!!くぅー!!...よし!!』
礼は夢膨らむ中アパートへ立ち入る
ピーンポーン♪
「はーい今行きますね~」
少しして可愛らしい女の子が扉からやって来る
その姿はまるで天使の様に礼には見えた。
「すいませんお待たせ致しました。今大家の母が不在で私が変わりに伺います。娘の橘 奈々-タチバナ ナナ-と申します。」
礼『あ、あ、あのーすいません!今日かりゃこ、こちらにお世話になりましゅ、大木 礼ですぅ!』
礼(やっべーめっちゃ可愛い~目は二重でぱっちりしてるし細身で華奢な体どこか呆気なさを感じる容姿に加え黒髪ロング!チキショー女の子に体勢ねーから超緊張するぜ!うぉーー)
奈々「あの~」
礼はふと我にかえる
礼『おぅ!』
奈々「すいません今日うちに移転される方はいらっしゃらないのですが...」
礼『おぅ!』
奈々「ですから移転予定は...」
礼『おぅ!...え!?』
礼は地図を見直す
礼『ここって高見荘って言うんじゃ?』
奈々「いえ家のアパートは橘荘です、えっと、あの高見荘は...」
と奈々は隣の今にも崩れそうでさびれたアパートを申し訳なさそうに指差す
礼『・・・』
奈々「です。」
礼『です。...よね、アハハこりゃすまなかったハハッハハハ...』
奈々「では」...チラッ
彼女は不自然そうに一瞬礼の背後を覗く
ウィーンカシャン♪
自動ドアが閉まった。
と同時に礼は落ち込む
そのまま隣のアパートへと足を踏み入れる
礼『はぁ~そりゃそうだよな~月の家賃が5000円って言ってたからな、んまぁ外見はボロいが5000円なら格安だぜ!』
階段には草が伸び上へ上がりづらくなっているさびれた廊下は所々下に抜け落ち天井の電球は割れている
礼『軽いサバイバルだな、大家は何処だ?そもそもこんな所に人が住んでるのか?まぁいい』
礼は郵送で送られて来た鍵を取り出し自分の部屋番号を探す
礼『えーと201、202、203、205、206お!ここだ、204は無いのか』
ガシャ!キュウィーン...
立て付けの悪い扉がゆっくりと開く
中は四畳半の薄汚れた畳と押し入れ煤抜けでコンロの無いキッチンに何故かブラウン管テレビと丸い小さな机が備え付けで置いてある
礼『おーまぁ悪くわねーな』
礼が中へ入ろうと玄関口に立った瞬間ふと後ろに気配を感じ咄嗟に殴りかかる
ドーーン!!
「うゎー!!」バタッ!!
礼『あ、、わりぃ癖で反射的に...(またやっちまった)』
「痛っ~」
礼『あーのすまねぇ!』
「ふふっ...やはり噂通りだ」
礼『?』
「大木 礼 通り名のゼロはだてじゃないな」
とゆっくり立ち上がる
見た目30代くらいの髪は長くどこか貫禄のある風貌のおっさんだ
礼『なんだ?あんたは?』
「ふぅごめんねちょっとした興味本意だよ」
と言うと胸ポケットに手を入れる
礼はまた反射的に身構える
「アハハ大丈夫大丈夫、はい」
差し出されたのは名刺だ
礼『ん?...(漢字が分からん!)なんて読むんだ?』
「おぃw 霊媒師って読むんだよ職業上の名は真-シン-で通している、あとちなみにここの大家だ」
礼『...ってえー(マジか~初っぱなから大家ドついちまった~やべぇ)す、すまねぇ何でもするから追い出さないでくれ!...(ん?あれ?俺今言っちゃいけないセリフを)』
シン「ん?今何でもするって言ったよねぇ」ニヤニヤ
礼『(言っちまってた~)あ、いゃその!』
シン「じゃ仕事手伝って」
礼『は?』
シン「霊媒師のさ」
礼『あのな~俺は幽霊見えねーしよぉもっとこう力仕事とかなら』
シン「あーいたーいいてててーさっき殴られた傷がぁー」
と殴られた部分を押さえながら急に座り込む
シン(さーて大木 礼!これが演技だと分かっていてもお前は立場的にも協力せざるおえないはずだ)
礼はゆっくりと目の前までやってくる
礼『おーいおっさんよぉ』
威圧感が半端ない
シン「ふぇ?」
礼『てめぇみたく人の弱みや失対につけこむ奴が俺は大っ嫌いでさぁちなみにさっき言ってた興味本意って意味はなんだ?』
シン「えーとぉね...あれは~」
礼『そもそもてめぇ俺がクソヤンキーのゼロだと分かっていて背後にわざと立ったろ?』
シン「ぃや~わざとってそんなわけ無いですよ~」
礼『俺はなぁ分かるんだよお前殴られる前提の受け身を無意識でとっていたぜ、自分で言うのも何だが俺は如何なる場面であっても相手を一発で気絶させる殴り方を自然とやっちまう -冒頭のヤンキーとの回想シーン- そう、お前みたくあらかじめ構えてない限りはな!』
ドーーン!!!
シン「グォーーーー!!!」
シンは蹴り飛ばされる
シン「イテェェーこれはヤバ...い」
礼『おっさん!手は抜いてやった、これで俺を追い出すならそうしてもらって構わねぇ!ただそれまではこの部屋使わせてもらうぞ』バンッ!!
勢いよく扉を閉める
シンは寝ながらゆっくりと煙草を取り出し一服する
シン「すー、ふぅ~、、、ん?」
空からポツリと雨が降って来た
シン「雨か、ふぅ~、不吉だね~」
そんな中隣の橘荘から奈々も窓越しに高見荘をじっと見ている
-高見荘206号室-
礼は殺風景な部屋で一人寝そべっている
礼『あ~やっちまった~明日から新たな高校ライフだってのに早くも住む場所すら失いそうだぜ...雨か』
外の滴る雨をじっと見ているとなにか懐かしい記憶が不意に甦る
それは礼が幼き頃当時いじめられっ子だった礼に雨の中土まみれに汚れた身へ手を差し伸べてくれた温かな記憶
うっすらとしていて断片的にしか覚えてないが...
礼(あれは...なんだったんだろ?)
礼『って今はそんな事じゃなくて今後だよ今後!』
とスマホの時間を見る[16:24]
礼『まぁとりあえず飯だ何か買って...』
外の雨を見る
礼『傘ねーよ!...あ、そうだ』
鞄から非常用のカップ麺を取り出す
礼『まぁ足らねーが仕方ねぇ』
カップメンを開けながら台所へ向かう
礼『ってコンロがねーよ!!』
礼は部屋を見渡す
台所の収納スペースも開けてみる
礼『やっぱねーか~...ん?』
少々錆びれた包丁が2本置いてある
礼『これじゃ使えね~まぁ俺料理しねーけど』
礼は諦めて畳部屋へと戻る
何気なくテレビをつけてみる
ザーー、、、
礼『おいおいまさかのアナログかよ』
プチィ!
テレビを消し座り込む
礼『雨止まねーかな~、はぁ~...ん!?』
少し開いている押し入れの隙間からコンロの様な物が見える
礼はすぐに立ち上がり押し入れを勢いよく開ける
ガーー!!
そこには一人用のコンロとありがたいことにガス菅まで付いている
礼『ありがてー、こりゃまだ使えそうだ!...ん?』
押し入れの奥に熊のぬいぐるみが置いてある
礼『あーん?なんだこりゃ?』
とぬいぐるみに触れようとした瞬間だ
外に稲妻が走る
ビカーンッッ!!!
「フレ...フレル..ナ...」
礼『ん?』
何処からともなく声が聞こえる
次の瞬間後ろの机が礼に飛んでくる
礼は反射的に避ける
礼『うぉ!ぁっぶね!』
すると熊のぬいぐるみが宙に浮き揺れながら台所へ向かう
礼『な、なんだ?ありゃ?』
ドーーン!!
そのタイミングで玄関が開く
そこにいたのは自称霊媒師のシンだ
シン「礼くん!やはり君はすごい!」
礼『おっさん!』
シン「ようやくワタシも仕事ができるよ!」
シンは自分の内ポケットに素早く手を入れる
「サセ...ナイ!」
熊のぬいぐるみはシンを浮かし外へと突き飛ばす
シン「う"ぉ!!」ドーーン!!
背中を打ちつける
熊のぬいぐるみはその勢いで先ほどの錆びれた包丁を2本浮かせ礼に向かって投げつける
シン「礼くん!!!」
礼は微動だにしない
グサッッ!!!
一瞬時は止まる...
「フフフッうふふふふ!」
...
礼は動くことなくじっと目をこらし集中していた、まるで眼鏡のピントを合わせるかのように...そして...
礼『 ...見えた!!! 』
そこには熊のぬいぐるみを抱いた可愛らしい少女が立っていたのだ
シン「大丈夫なのか?礼くん!」
包丁の一本は礼の脇腹をかすり血が滲む
もう一本は腕に刺さったまま状態だ
礼は気にせずじっと少女を見ながら歩き始める
「え?」
少女は近づいて来る礼に一歩引き怖がる
「イ...イ...イヤーーーーー!!!」キーン♪
その高音と共に部屋にある畳や靴といったありとあらゆる物が宙に浮く
シン「マズい!」
「こないでーーーー!!!」
礼を全力で押さえ込む
礼『!』
が礼は全く気にせず少女へ迫る
「そ、そんな!どうして?イヤッ」
ヒョコッ!!
少女は後ろへ躓き尻餅をつく
礼が目の前までやってくる、すごい威圧感だ
「ご、ご、ごめ...んなさい」
礼が手を振り上げる
「きゃ!」
少女は咄嗟に身を小さくし熊のぬいぐるみを守る
ふわぁっ♪
「!?」
礼は少女の頭を撫でようとする
礼『おー!!すげーー!!くっきり見えるのに触れねーぜ!』
何度も霊体の少女へ触れようと試みるがまるで煙を触っているかのような感覚だ
「?...ちょっと!どこさわってんのよ!///」
礼『いゃだから触れねーんだって』
「はぁ...」
少女は力が抜け腰を落ち着かせる
目を閉じ暗い中自分が幽霊であることを再認識する
...
すると何処からともなく声がする
シン「よくやった礼くん!」
シンは内ポケットから御札の様な物を取り出し少女へと掲げる
「キャーーーーーー!!!!」
急な叫び声と共に少女の身が光に包まれ発光し始める
礼『!』
その眩しさに礼は腕で目を押さえる
光は窓の外にまで神々しく漏れ渡る
奈々「!?」
橘荘から見ていた奈々が異変に気づいた
奈々「・・・フフッ」
奈々はじっと光を見つめ不適な笑みを浮かべる
-高見荘-
ギラーー!!ギラギラーーーーー!!!!
さらに光輝く少女
「ア"ーーーーーーー!!!!」
シン「礼くん!そこは危ない!下がって!」
礼『・・・』
礼は目を閉じながら大きくその場でジャンプする、ザッ!!
シン「よし!あとは任せe...」
ドーーーン!!!!
礼は少女を頭上を軽々飛び越しシンへ鋭いジャンピングキックを放つ
シン「グォーーーーー!!!!」
その瞬間少女の目に映る光景がスローモーションになる
少女の目の前に礼がゆっくりと着地する
その姿は少女が大好きだった自分のお兄ちゃんの姿だった
「オニィ...チャン...」
スタッ!
礼は見事な着地と同時に目を開ける
礼『ふぅ』
「どぅ...して?」
礼『ん?』
礼は少し考える
礼『さぁ分かんね俺の体にでも聞いてくれ』
「?」
少女はキョトンとする
吹っ飛ばされたシンがゆっくり起き上がる
シン「れ...礼くん、ハァハァ...なぜなんだ?」
礼『おー!おっさん意識あるのか?やっぱりあんた人並み以上に丈夫な体してんなー』
シン「でっしょーアハハ良くお前の前世はサンドバッグだよねって言われるんだ~ハハ~じゃなくてーー!!」
礼(こいつ元気だな)
シン「礼くん!そいつは悪霊だぞ!見た目はいたいけな少女に見えるかもしれない!だがな..」
礼『なぁおっさん!...ぃゃ霊媒師とやら、まぁあんたの仕事を邪魔したことは詫びるすまなかった』
・・・
シン「...え?君が謝るのかい?」
礼『大人の仕事にケチ付けちまったんだ詫びぐらいは入れる、おっさんにとっちゃこれが生きて行く上で食い扶持なんだろ?』
シン「まぁ...うん(意外に常識はあるんだな)」
礼『正直俺も体が勝手に動いちまっただけで別にこれと言って理由もねぇ』
礼はふと少女を見る
礼『なぁおっさん、この子はどんだけ危険なんだ?』
シンは蹴られた腹を押さえながら考えた様な深いため息をつく
シン「はぁ...」
シンはまた煙草を取り出しゆっくりと吸い始める
シン「ふぅ~...どれだけってこともないが基本悪霊は皆危険な存在だよ」
礼『ほぅそうかい、なぁガキんちょお前名前は?』
「む!ガキじゃないわ!私は14才の時霊になったのよ!名前はサナ!名字は忘れたわ」
礼『は?お前どう見ても小学生だろ?』
サナ「失礼ねー!しかも霊体期間合わせたらあんたよりも長く生きているのよ!」
礼『ほっほーま!ガキには変わりねーがな』
サナ「むっかー!!」
サナはまた周りの物を浮かし始める
礼『おぅ!まだ遊びたんねーのか?』
シン「君たち!」
礼 サナ『「何?」』
煙草を吹かす
シン「すーふぅ~はぁ...まずはこれからの事を話そう の前に礼くん君について話して置かなければならない事がある」
礼『あん?なんだよ?あ!まさかもう出ていけってのか?』
シン「いやいやむしろその逆だそもそも礼くんをこの高見荘へ来るよう裏で仕向けたのはこのわたしだ」
礼『え?』
シン「地元でゼロと呼ばれた伝説のヤンキーがこの近くの高校への編入試験を合格したと聞いてね不動産に根回しをして超格安物件を個人的に提供したのさ まぁ一般人なら普通怪しむ所だが礼くんならすんなり食いついて来ると踏んでね」
サナ「礼wあんた単純すぎねww」
礼『ぅ、うっせー//』
シン「でここからが本題だ、礼くん君には力がある」
礼『まぁ喧嘩ばかりしてたからな』
シン「いゃ腕っぷしだけじゃない精神力の方だ」
礼『は?』
サナ「礼、私はあなたの強すぎるオーラで目覚めたのよ」
礼『なんだそりゃ?』
シン「礼くんからは他と比にならない程のエネルギーが出ているのさ、いや垂れ流し状態と言った方がいいかな そのエネルギーは普段寝ている霊を呼び覚ますんだ」
礼『ん?ちょっと待ておっさん!普段寝てんならその時に除霊でも何でもすればいいじゃねーかよ』
サナ「無理よ私たちは眠る=存在を消すことができるの だから除霊は愚か認知すらできないわ私もそこの怖いおじさんに2~3回見つかって存在を消さなかったら危なかったんだから!」
シン「あの時はもう少しだったんだけどね~ごめんね~」
サナ「それ何に対してのごめんよ!Σ( ̄□ ̄;)」
礼『なるほど何となく理解はした。まぁこのアパートへ手招きされたのは構わない今後も住めるならそれでいい、ただ!おっさんの手伝いはしない』
シン「えー礼くんワタシと君の仲じゃないか!共に悪霊を除霊しよう!ほら霊も未練を残したままこの世にいても、さ!」
とサナを見る
サナ「む!」
礼『ここまで尺的に15分も経ってねーのに仲もクソもねーだろ』
シン「まぁまぁ( ´∀`)それに礼くんは悪霊との接触で霊が見えるようになった、後天的に見えるケースはなかなか珍しいぞ~!」
サナ『ちょっと!悪霊扱いするんじゃないわよ!これだから霊媒師は嫌いなの!』
礼『なぁそもそも悪霊ってのは何をもってそう言うんだ?』
シンは煙草の煙を吹かしサナへと煙草を向ける
シン「簡単だよこの子みたいに能力をもっているのが悪霊さ」
礼『能力?』
サナ「ほらこれよ」
と周りの物を浮かす。
礼『ほぅ』
サナ「私の能力はこうして物を浮かして攻撃するの」
礼『アハハwこんなので攻撃できんのかよw』
サナ シン「・・・」
サナとシンは血の滲んだ礼の脇腹と腕にまだ刺さっている包丁を見て目が点になる
シン「ゴホンッ!礼くん!まずはその傷の手当てだ」
礼『は?』
礼はようやく腕に刺さったままの包丁に気づく
礼『うぉーなんじゃこりゃ!?』
サナ「え?あんた本当に気づいて無かったの!?」
礼『おぅ、そうかあの時か~サナもなかなかやるじゃねーか』
と礼は腕の包丁を勢いよく手で引き抜く
シン「お、おいもっと慎重に」
礼『ん?』
サナ「あんたどんな神経してんのよ!」
礼『刺した張本人に言われたかねーがまぁ喧嘩で毎日傷は付き物だったからな、この程度なら気にならね』
シン(こりゃ想像以上の人材だ、まぁこの調子じゃすぐに...)
シンは彼を中心にこれから起こる波乱を里っていた
礼『で?つまりそういった能力を持たない霊は普通の霊って訳か?』
シン「ん?まぁそうだな」
礼『なら悪霊ってのも大したことねーな』
サナ「バカね~私の能力はこうして物を浮かすだけだけど他の子はもっとヤバイのが沢山いるんだから!」
シン「悪霊によってその使える能力も力の程度も異なるんだよ」
礼『ふーん、まっ俺には関係無いがな』(ふぁーん)
眠そうにあくびをする
サナ「何言ってるのよあんたこれから死ぬかもしれないのよ」
礼『...ふぇ?』
シン「確かに今の状態は非常に危険だ礼くんが近づくだけで悪霊を刺激しこの子みたく攻撃して来る可能性がある」
礼『待て待て今まで生きて来て んな事無かったぜ?』
シン「それは今まで認識をしていなかったに過ぎない霊は自身を認知されてないと分かれば何もしない 、すーふぅ~礼くん人ってのは不思議でね物事を理解してしまうと事情が大きく変わってしまうんだよ」
礼『なら見つけても とことん無視すりゃいいってことか』
サナ「あまいは私たち幽霊は人間以上に敏感よ、いくら見てみぬふりをしても感覚的に認知しているかどうかぐらい分かるわ」
礼『はぁ?』
サナ「礼!恨むならこの霊媒師を恨むのねあんたの今後の平穏な生活を全て奪ったのよ」
と少し悪い顔でシンを指差す
シン「ぅ"ッ悪霊め これはわたしも計算外の出来事だ、確かに非はあるが...」
礼はサナの頭にふわっと手を乗せる
サナ「え?//」
礼『ばーか恨んだりしねーよ たしかにお前みたいなガキが寄ってくんのは迷惑だけど』
サナ「むかっ」
礼『けどまぁいままでも敵だらけの人生だったしな今さら一つ二つと障害が増えた所で俺の生き方は変わらねーよ それにいない者が見える訳じゃなくて元々そこにいる者が見える様になっただけじゃねーか、んなの大した違いじゃねぇよ』
サナは大好きだったお兄ちゃんの姿をまた礼に重ねていた。
サナ「し、仕方ないわね他の子に襲われないよう私が礼の側にいてあげるわ!」
礼『ほーそうかそうかー、って!なんでだよ!』
シン「ふぅ~うーん、元来悪霊と部屋を共にするなんて霊媒師としては止めるべきだが...まぁ異例事態だしな検証する価値はある、ただし礼くん!悪霊は決して信用するなよ」キラーン
とキメ顔で礼を見る
礼『キラーンじゃねーよ!何話し進めてんだよ!』
サナ「あら霊媒師さんともあろう方がどういう風の吹き回しかしら?」
シンは本日8本目の煙草を吸い吹かす
シン「ふぅ~勘違いするなよ悪霊お前らに善意の心があるとは思ってないさ もしも彼に危害を加えた場合は問答無用で消すからな」
サナ「フフフッそれでいいのよ霊媒師!私たちは決して相容れない関係よ」
シン「ふぅ~...そうだな」
礼『いやいやいや!お前らの関係性の話しなんてどーでもいいんだよ!冗談じゃねーぞ!俺にガキを養うだけの余裕なんて経済的にねーんだよ食費だってばかになんねーしよぉ』
サナ シン「「いやそこかよw」」
サナ「はぁあのね私は幽霊よごはんも食べなければお風呂も入らないわ」
礼『え?風呂ぐらい入れよ』
サナ「入れねーよ!( ̄□ ̄)」
シン「まぁ礼くん、言う通り経済的な面は心配は無いさ」
礼『なら構わねーよ』
シン「いいのかい!あー、勧めておいて何だがその悪霊が礼くんの隙をみて襲う可能性だってあるんだぞ?」
礼『そうかそりゃ楽しみだ』
とサナの頭をふわりと撫でる
サナ「そ、そんなことしないわよ//」
礼『なーんだ残念だな~ハハ...』
サナ「なにからかってんのよ~...」
二人の言い合いは続く
そんなやり取りを遠目で見ながらシンは思う
シン(伝説のヤンキーゼロ大木 礼 もしかしたら彼が霊と人との新たな可能性を指し示してくれるのかもしれない)
雨も止み晴れ間が差す空を見つめシンは最後の煙草を吹かす
シン「ふぅ~...」
《1話中編へ》
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