東京血風録3 キラーズ・コード【改編版】
摂津の怒声の後はこうである。
瞬時に起こったこと。

林の方を、漣左と藤堂は見ていた。
怒声に驚いた漣左は振り向き、摂津を見た。
そこに居たのは紛れもなく鬼であった。
巨大な大きな角が生え、腕は10本生えていた。と、認識するや否や左右8本の腕は前方、奈良組へ向かって伸びていた。残り2本、上腕に当たる上の2つはあらぬ方角へしなりながら伸びていた。
一つは上へ、もう一つは斜め上前方へ。
転びそうになる、奈良鬼の横を過ぎて8本の腕は、追手の2人へ襲いかかった。突然の爪手の襲来に、成す術がなかったが、それでも一人は4本の腕をあらぬ方向へ弾き飛ばし、一人はお札で2本の腕を粉砕した。
弾かれた腕はその勢いのまま、転んだ鬼の体にぶつかって、地面に転がした。
腕を弾いた男は、弾いたのと反対に飛ばされて、お札の男と重なった。
片手で飛んできた男の体を受け止めたが、そこに隙ができた。
残っていた2本の腕が、飛ばされた男の右脚を、受け止めた男の左腕を豪快に斬り飛ばした。
呻く断末魔が響き渡る。

来たるべき時が来たか。
鳳竜堂柊一は思った。
柊一の祖父の左腕は無かった。
肩口からすっぱりと。
理由は問うた事が無かった。
その鋭利に斬られた腕を見ると、言葉にならなかったのだ。
じとりと冷や汗が流れた。

龍王院真琴の祖父は右脚が欠損していた。太腿が寸断された様は、幼い頃悪夢を見せるのに十分な迫力があった。
その理由が、これだったのだと認識した。此処に来たのも偶然ではなかったのだという事も、同時に認識した。


昔話は続く。








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