東京血風録3 キラーズ・コード【改編版】
腕と脚。
失った瞬間を見ている暇はなかった。
上へ振り上げられた腕は、重力を伴い藤堂の頭上へ振り下ろされた。
藤堂は頭の上で両腕を交差して、最大出力の反発術式を発動した。
腕は弾むようにして、止まった。
が、その先の指と爪が更に伸びてきた。
ゆっくりと進行して交差した腕を貫いた。そのまま腕を切り裂き下降した。
うぐぅっ!
声を漏らすと、術式が緩んだ。
腕を切り裂いた爪が、太腿に食い込んでいた。
血塗れの腕で頭上に固定されていた摂津の手を掴むと、今出せる渾身の力で握り返した。同時に、法力を叩き込む。
手首から先を爆砕させた。
その後、その場に倒れ込んだ。


藤堂飛鳥は、祖父の疵痕と思い出していた。熊にでも遭遇したのかと思っていた。祖父の武勇伝もそれに近かったような気もするするが、内密にしておきたかった事なのか。


もう1本、前上前方へ伸ばされた左腕は、薙ぎ倒す様に漣左を襲ってきた。
六角形の棒、正確には錫杖を槍のように構えると、向かってくる掌目掛けて突き刺していた。
逃げんとする掌を返して、錫杖ごと地面に突き立てて封じた。手首を踏みつけた後、胸の前で印を切ると念仏を唱えた。
みるみる錫杖が赫く染まり、腕が霧散した。


王道遥の眼前に、亡き漣左の姿が見えていた。
厳しかったが、勇ましい漢であった。


瞬時に、3人の負傷者と2体の手負いの鬼が出来あがった。1人無傷。






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