僕に初めての感情を君が教えてくれた。
僕が、摩耶を初めて見たのは、受験の日だった。
受験を受ける高校に、行く道の途中のバスだった。
その日は、人が多くて、とても混雑していた。お婆さんがつらそうに立っていて、誰も席を譲ろうとしなかったんだ。でも、君は、違った。
お婆さんが乗ってきた瞬間、席を譲っていた。
普通の人だったら、普通の光景ぐらいで終わるだろう。でも、僕は、これが何故か強く印象に残って、受験で緊張するなとか、早く今日が終われと思っていたのに、すべて吹き飛んだ。
ずっと女子に興味なんてなかったのに、何故か、名前も知らない君のことを知りたいと思った。
また、会えたらいいなと思った。