16歳、きみと一生に一度の恋をする。
お土産屋を出ると、出口のほうに向かって歩いていく人たちの姿があった。閉園は十七時。時計を確認すると、時間はいつの間にか四時を過ぎていた。
「なあ、最後にあれに乗らない?」
晃がふと顔を上げる。視線の先には観覧車があった。
観覧車の直径は六十センチで、一周するのにかかる時間は十五分ほどだと記載されている。
回ってきた観覧車に晃が乗り込み、手を引かれながら私も乗った。
狭いことはわかっていたけれど、対面に座ると膝が少し当たるくらい近かった。
ゆっくりと私たちのゴンドラが上がっていく。全面ガラス張りになっているので、浮上していく景色がよく見渡せた。
「今日はありがとう」
私が言おうとしたことを晃が先に言った。
「本当は断られると思ってた。だから遊園地に行くことも今日まで黙ってたんだ」
うん、私も本当は断ろうとしてた。
でも寸前になって行くと返事をしたのは、相手が晃だったからだ。
私たちにはとてつもないしがらみがあるけれど、彼といると私はすごく自然体でいられる。
「俺さ、あの手紙を見つけて汐里のことを知って、気持ち悪いけどお前が通ってる小学校まで顔を見にいったこともあったんだ」
「え……?」
「なんか俺の想像と違った。手紙を送ってくるぐらいだからもっと気が強くてツンとしてるやつかと思ってたけど、お前は驚くくらい堂々としてた」
父が不倫したことで周りから嫌というほどあれこれと言われたけれど、私は可哀想なんかじゃないという気持ちだけは捨てないようにしてた。
そう思うことで、お母さんのことも可哀想そうじゃないって、周りに思ってほしかったから。
「それで高校説明会でお前の姿を見て、俺も今の高校を選んだ。自分でもうまく説明ができないけど、できれば謝りたかったし、怒られたかったし、叶うなら許されたいって思ってたけど、本当はただ汐里に近づきたかった」
晃の言葉はいつだってまっすぐで、私の胸のど真ん中を撃ち抜く。