16歳、きみと一生に一度の恋をする。


「許すもなにも、晃のせいじゃないって前に言ったでしょ?」

そう告げると、彼は切ない目をしていた。


その瞳の奥になにか抱えているものが見え隠れしている。

けれど、それを聞いても晃はなにも言わないだろう。

本当の気持ちを素直に言えない私たちは、とても似てるから。


「私、思い出って止まったままだと思ってたけど違うんだね」

「ん?」

「別の場所だったけど、遊園地って昔家族で行った記憶があったから、もっと苦い気持ちになると思ってた」

でも今日は本当に楽しくて、こんなに時間を忘れたのはいつぶりだろうってくらいに。

「思い出は進んでいくし、上書きもされる。きっと遊園地に来たら私は今日のことを思い出すと思うから」

ずっと心の痛みが増えないようにしてきたけれど、もしかしたらそれは逆効果なのかもしれない。

避けるから余計に考える。避けずに一歩踏み出して素直に楽しいって思えたら、私はもっと笑えるようになると思う。

それを晃が教えてくれた。

……と、その時。ゆっくりと回っていたゴンドラが頂上に到達した。同時に眩しいほどの夕焼けが差し込んでくる。

空の色がとても綺麗で、それはまるでさっきの天国の色のようだった。


「そういえばまだ付けてなかったな」

晃がストラップを出したので、私も袋から取り出した。晃は手先が器用だからあっという間にスマホに付けて、私のにも紐を通してくれた。

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