16歳、きみと一生に一度の恋をする。
遊園地からの帰り道。電車に揺られて地元に着く頃には、すっかり日は落ちてしまっていた。
「お化け屋敷に入った時、ちょっとビビってただろ」
「気のせいじゃない?」
「いや、だって俺の腕少しだけ掴んできてたじゃん」
まだ楽しかった余韻が消えない。このまま家に帰ってしまうのがもったいないほど、今日は時間が過ぎるのが早かった。
「晃?」
……と、次の瞬間。買い物袋を肘に提げている女性が歩いてきた。
年齢はおそらく三十代後半くらい。すらりとスタイルが良くて、とても綺麗な人だった。
知り合いかな、と彼の顔を見ると、わかりやすく表情を強張らせている。
「……か、母さん」
その言葉を聞いて、心臓がドクンッと大きく跳ねた。
……この人が晃のお母さん?
ということは、父の不倫相手だった人であり、私の家族を壊すきっかけになった人でもある。