16歳、きみと一生に一度の恋をする。


「晃のお友達かしら?」

なにも知らない晃のお母さんは、にこりと私に笑いかけてきた。

とても品がある喋り方。着てるものも身につけるものもオシャレで、高校生の息子がいるとは思えないほど若く見える。

……お父さんが、なびくわけだ。

じわりじわりと、言葉にできない感情が襲ってきた。 

「えっと、友達っていうか……」

晃が口を濁している。

当然だ。私は今のあなたの夫の子供であり、父があなたのことを選んだせいで、私たちの家族はめちゃくちゃになった、なんて……説明できるはずがない。

頭がクラクラとしていた。

できれば会いたくなかった。

神様は、やっぱり意地悪だと思う。

さっきまであんなに楽しかったのに、今はもう黒い気持ちでいっぱいだ。

晃は晃だから関係ないと。私たちが置かれている環境は大人が作ったものだから、切り離せると思っていた。

でも、そんな簡単なことじゃない。

だって、この人は、晃のお母さんなのだ。

それで、私たちを裏切った父は晃のお父さんになり、そこに家族という形がある。

関係ないなんて……そんなことあるはずがない。

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